このお話


お友達の素敵絵師様のゆっちそっちさんが、何とも素晴らしい、心洗われるイラストを描かれていて


図々しくも半ば強引に書いてしまったものです


イメージを崩してないかだけが非常に不安ですが…


先に謝ります!


ゴメンナサイ!!!orz←土下座


イラスト、本当に素敵ですから!!!


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ぜひご覧ください♪

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この時代に飛ばされて、どれだけ経っただろうか


右も左もわからない中で、俺と○○は過ごしている



本当はいつも傍にいてやりたい


子供の頃からずっと守ってきた彼女を、今こそ近くで支え、守ってやりたいのに


俺は龍馬さんと行動を共にし、


○○は藍屋さんの置屋に身を置いている



幸いアイツの周りは、藍屋さんをはじめとても親切な人が多くて、不自由なく暮らしていられるようだ


新造としての評判もなかなかのものらしく、アイツ目当てに来る客も少なくないらしい



ここに来て、確かに○○は綺麗になった


少し寂しくなるくらいに…



「○○はんは、きっと恋をしてはるんよ


最近ほんに綺麗にならはったもん」


先日島原を訪れたとき、偶然会った花里さんがそう言っていた



○○、一体誰を想っているんだ?


今のアイツには、時代の英雄たちが取り巻いている


新撰組の土方さん、沖田さん


最後の将軍になる慶喜さん


勤皇志士の高杉さん、古高さん


いつも優しく見守っている藍屋さん


おそらく龍馬さんも、○○のことを想っているだろう


男の俺から見てもカッコイイ、そして時代に名を残す男たちがいて、アイツが惹かれないわけがない


そして、アイツから見て“ただの幼馴染”の俺が、太刀打ちできるわけがない




『…くん、翔太くん!』


声をかけられ、思わずハッとする


『どうしたの?考え事でもしてた?』


そうだった、今夜は揚屋に来ていたんだった


いつもなら当然龍馬さんがいるんだけど、何故か突然用事ができたとか言って帰っていったんだ


「いや、何でもないよ」


慌てて笑顔を作り、○○に返す


『そういえば龍馬さん突然どうしたんだろうね』


他の男の名前を出され、チクッと胸が痛む


「夕方までは用事があるなんて言ってなかったんだけどな」


悟られないようになるべく平静を装う


もっとも、ニブいコイツは気づきもしないだろうが




ただ近くに座って他愛もない話をしているのは昔から変わらないのに


やっぱり○○は綺麗になった


着ている和服や、新造として仕込まれた立ち居振る舞いのせいだけじゃないだろう


嫉妬と本音が入り交ざって、思わず本音がこぼれる


「おまえ…綺麗になったな」


ボッと赤面した○○が慌てふためく


『ちょっ…翔太くん、どうしたの急に』


そう言われ俺も思わず自分の口を塞ぐが、もう遅い


後戻りはできない


「花里さんが言っていた おまえ、好きなやつがいるのか?」


真っ赤になって俯く○○に、俺は追い討ちをかける


「さっき言ったのは本当のことだ 誰を想っているんだ?」


いつの間に、そんな大人の女の表情をするようになった…




…勢いで言ってしまって後悔する


目の前には、真っ赤になって困り果てた○○


「ごめん・・・変なこと聞いて」


不安にさせないよう、もう一度笑顔を作る


俺は幼馴染だ


幼馴染だけど…



それでも、自分の想いを伝えるのは今しかないのかもしれない


ここは自分達の明日の命もわからない時代だ



「でも、これだけ言わせてくれないか?


俺はお前が好きなんだ」


子供の頃から、そして今も…


「お前が誰を想っていても


俺はお前をずっと…」


思わず言葉が止まる


○○の瞳から、大粒の涙がこぼれていた


「・・・っ、ごめん」


ふるふると首を横に振り、○○が微笑む


『嬉しいの』


消え入りそうな声だったけど、確かにそう聞こえた


『私もね、翔太くんのことが好きなの


子供の頃からずっと…』


頭が一瞬真っ白になる


じゃあ○○の想っていたのは…


「それ、本当…か?」


恐る恐る聞きなおすと、○○は涙を浮かべながらも花のような笑顔で頷いてくれた


思わず引き寄せ、腕の中に閉じ込める


『私の初恋なの』


掠れそうな声が耳元に届く


『子供の頃からずっと傍にいてくれて…


ここに来てからもずっと守ってくれて…


翔太くんと一緒だったから、ここにタイムスリップしても怖くなかったよ』


○○を抱きしめる腕に力が入る


「俺も…初恋だ」


抱いた腕を緩め、○○の顔を見る


俺だけに見せる○○の微笑みが愛おしくてたまらない


熱を帯びた○○の頬をひと撫でし、


緩やかに弧を描いた桜色の唇に、そっと自分の唇を重ねた




「俺…この時代の偉大な英雄たちに負けないよう頑張るから


そんな男になるから」


『翔太くん、もう全然負けてないよ


私が一番頼りにしてる、頼もしい男の人だよ』




そう言って微笑む○○を、もう一度ぎゅっと抱きしめた


時を超えて実を結んだ俺たちの恋は、はじまったばかり…



~はつ恋【結城翔太】・完~