「…一体どうしたんだい?その声は」
帰宅するなり開口一番、慶喜さんはカバンも置かずに私に駆け寄って来た
息が漏れるだけの、声にならない声をふりしぼる
『風邪が喉にきて、声が出なくなってしまったみたいで…』
彼はひとつ、ふぅっと短い息をつき、私の肩に両手を置いた
「最近ゆっくり休めてなかっただろ?無理がここに出たんだね」
彼がそっと私の額に手を当てる
大きな手が、ひんやりと額を包み込む
「…熱もあるじゃないか」
とにかく横になれと、彼は私を寝室へと促す
ゆったりとした部屋着に着替え、布団を被る
ほどなくして彼がやってきて、傍らの椅子に腰掛けた
「こんな気候のせいもあるけど、調子を崩しがちなのは疲れもあるんだろうね」
そういいながら、サイドテーブルにトレイをひとつ置いた
そこに乗っていたのは、できたてのたまご雑炊とフルーツがたくさん入ったヨーグルトで
喉が痛くて熱がある私にも、食べられそうなものだった
「ほら、冷めないうちに食べて」
彼の優しさで胸がいっぱいになる
お礼を言おうと口を開こうとして、彼の指が私の唇に触れ、制止された
「何もしゃべらなくていい 俺の前でまで無理をしないで
その代わり、体調がしっかり戻ったら、またお前のかわいい声をたくさん聞かせて」
そういたずらっぽく微笑む彼に赤面する
ひとつコクンと頷いて、熱々の雑炊を口にする
彼の優しさと愛情が、体中に染み渡る
言葉にできない代わりに、精一杯の笑顔を彼に向けた
「まったくお前はこんな時まで…
笑顔だけで俺を落とすつもりかい?」
クラクラしたのは、熱のせいだけじゃない
照れ隠しにヨーグルトを食べながら、声が戻ったときに彼に一番に伝えたい言葉を探した
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ゆきさん、大丈夫でしょうか?
回復してるといいんですが…
遅くなりましたが、慶喜さんにお見舞いに行ってもらいましたよ♪
早く元気になってね!