トントントン…

朝食の準備とお弁当を作っていると、いつもの時間きっかりに晋作さんが起きてきた

「よう、おはよう」

『・・・・・・・?』

あれ?

声が出ない

そういえばこないだから喉がイガイガしてたけど、まさか声が出なくなるなんて

「どうした?」

とにかく、内緒話のような声を振り絞って、声が出ないことを伝える

でも、いつもの距離のままじゃ、彼に声が届かない

「声…やられたのか?」

何度も頷いて返事をする

少し寝癖のついた頭をガシガシかきながら、彼がふぅっとひとつ小さく息を吐く

「そう言えばこないだから喉が変だって言ってたな、お前」

身振りでしか意思表示できない私の前に彼が立ち、私の髪から頬へスッと手を撫で下ろし、

「しばらくは離れていたら会話もできないな だからお前が話す時は、俺の耳元で話せ」

彼独特の口角をぐっと上げた笑みで私の瞳を覗き込む

…面白がってる

ぜったい面白がってる

筆談じゃもっと面倒だし、ちょっと悔しいけど、こんな状態じゃそうするしかない



朝食を終え、お弁当を持った彼を玄関先まで送る

彼に近づき、スーツを着た彼の肩に手を置き、少し背伸びをして、

『…いってらっしゃい』

耳元でそう囁く

少し目を見開いた彼がこちらを振り向き、鼻と鼻が触れそうなくらいに顔が近づく

くっと喉で笑った彼が、

「悪くないな、こういうのも」

そう言って私の腰を抱き寄せる

『晋作さんっ…仕事に…』

真っ赤になった私を尻目に、

「あぁそうだな 続きは帰って来てからだ」

切れ長の瞳を細め、そっと体を離す

ドアに手をやった彼がふいに動作を止め、また私の方を向き直って、持ち直したバッグをもう一度玄関に置いた

『・・・・・・?』

玄関のコートハンガーにかけてあった、私の夏用のストールをおもむろに手にし、そっと私の首に巻く

「こういうときは、なるべく温めておいた方がいいんだ

暑いかもしれないが、今日はそうしているといい」

『晋作さん…』

嬉しさとくすぐったさが胸をいっぱいにする

少し照れたような彼が、今度こそ玄関を開け、眩しい朝陽の中出かけていく

『いってらっしゃい』

大好きな彼の背中にもう一度囁き、首のストールをぎゅっと抱きしめた




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

…という妄想をね

朝のいっそがしい時間にしています

一昨日の晩から、何故か声がおかしい里桜です

今朝もオカマみたいな声です



症状としてはノンフィクションですが

実際はこんなに甘い朝ではなく←当然

オカマ声でギャーギャーいいながらの、いつもの騒がしい朝です

喉と、少し出る咳以外はいたって元気なので、早く声が戻って欲しいと切に願うばかり…(。-人-。)



さて、ゴミ出してくるか…