ときめきデート・土方歳三様!!
ヾ(@^▽^@)ノ

Squall/松本英子
をBGMにお楽しみください♪

携帯では見られなくてゴメンナサイ(汗)

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彼に会う日は、なぜかいつも雨だ

今日も屯所に出かけ、帰ろうと思ったら雨が降ってきた

傘を持っていなかったので、傘を借りて出ようとしたとき

私の横で、1本の傘が開く音がした

『土方さん…』

「こんな天気だ 置屋まで送っていってやる」

彼のとは別に、私に差し出された1本の傘

『…ありがとうございます』

それを受け取り、彼の少し後ろで傘の花を開かせる




…雨は嫌い

せっかく一緒に歩いている彼の姿を傘が隠し

広げた傘が彼との距離を遠くし

パタパタと傘の上で跳ねる雨粒が、彼の声を遠くするから

止まない雨音が、不思議な静寂を生み出し

沈黙のまま、置屋への道を歩く



雨は激しさを増し、着物の裾をじわじわを湿らせていく

「・・・・・・・・・・?」

土方さんが何か言ったけど、雨音で遮られ聞こえない

『何ですか?土方さん』

背中にそう問いかけると、彼はこちらを振り向いて傘を少し上げた

「雨が強くなってきやがった 少しそこの神社で雨宿りして行こう」

やや前方に見える神社へ急ぎ、境内の軒で傘をすぼめる

着物についた雫を払い、降り止まない雨空を仰ぎ

いつも味方してくれない天気に、はぁ…とひとつため息が漏れる

土方さんも黙って空を眺めている

だんだん沈黙に耐え切れなくなってきたとき


…はっくしゅん!


沈黙を破ったのは、自らのくしゃみで

それが予想外に大きかったから、土方さんがくっと笑う

恥ずかしくて思わず俯くと


ふぁさっ


肩に心地よい重みが乗る

それはすぐに、彼の羽織だということに気がついた

「俺のも少し濡れているが、何も無いよりましだろう」

切れ長の目を細めた彼が、優しい笑みでこちらを向く

『そんな…いいですよ、土方さんが風邪ひいちゃいますよ』

「俺はいつも見回りでは傘を差してねぇんだ そんなにやわじゃない

それに今は傘があった分どうもねぇんだよ」




さっきまで彼が着ていた羽織には、まだ彼の温もりが残っていて

まるで抱きしめられているような錯覚に陥る

羽織に袖を通してみると、私の腕がすっぽり隠れるほどの裄丈で

わずかに外に出た指先で、そっとつまんでみた

思わずぎゅっと自分自身を抱きしめる



そんな私の様子を黙ってみていた土方さんが

「どうした、寒いのか?」

はっと我に返り、自分がしていることに思わず赤面する

『あ、いえ、違うんです…』

ごにょごにょと誤魔化していると、彼がふっと笑い、


ぐいっ


肩を引き寄せられ、彼の胸元に顔を埋めるかたちになった

『ひっ…土方さん?』

「それで満足してるなよ」

視線を上げると、至近距離に彼の顔

体中が熱を帯びる

「羽織はお前を抱きしめてくれねぇぞ?」

ドキンドキン

心臓がどうにかなりそう

それでもそれ以上に、彼の腕の中が居心地良くて、思わず頬をすり寄せる

土方さんの体温

土方さんの香り…



ざぁぁ…

雨は相変わらず降り続いている

でも、今はこの雨の音が心地よい

雨音の中、彼の胸の鼓動に耳をそばだてる

とくんとくんとテンポ良く奏でられるリズムに、何事にも変えられぬ安堵を覚える


「お前はこんな雨の日は嫌だっていうかもしれないがな」

私を抱きしめたまま、土方さんが話しかける

「俺はお前と居られればどんな天気でも構わないんだ」

驚いて見上げた土方さんの耳たぶはほんのり赤くて

それでも彼は平静を装った様子で続ける

「お前はこの状況、嫌か?」

相変わらず彼の腕の中にすっぽり入ったままの私は、当然の答えを彼に返す

『嫌なわけないじゃないですか こんな贅沢…こんな幸せなことありませんよ』

彼がふっと笑う音が聞こえ、

私を抱く腕に力が入る

少しだけ早くなった彼の鼓動が嬉しい

『天気が素敵な演出をしてくれたんですよね』

私ももう一度、彼の胸に頬をすり寄せた



天気はいつの間にか小雨になり、

雲の切れ間から光が差し込んできた

「上がってきたな」

眩しそうに空を見上げる彼に、私は少しの寂しさを募らす

雨が上がったから、もう帰らなければならない

もっと一緒にいたいのに…

ついさっきまで雨が嫌いと言っていたのに、今はその雨を惜しんでいる自分に笑えてくる

「そろそろ行くか」

ようやく顔を出した太陽が、まだ少しだけ空気に残る雨をキラリと光らせる

少し名残惜しいけど、返事をして彼の隣りへ急ぐ



もし晴れていたら、無かったかもしれない時間

なかなか一緒に居られない私たちに、雨がくれた贈り物なのかもしれない

『私、雨も好きになったかもしれません』

微笑む私に、土方さんがくくっと笑い、

「単純なやつだな」

そう言って優しく手を絡めてくれた



茜色に染まりつつある景色の中、ひとつに繋がるふたつの影

『まだ帰りたくないな…』

心の本音が無意識に言葉に出たらしく、はっと口を閉ざした時には彼がこちらを振り向いていた

「そんなこと簡単に口にするんじゃねぇ」

ちょっと呆れながらも彼が口にした言葉は、

「本当に帰したくなくなるだろう」

―――――!

彼の大きな手が、そっと私の顔へ伸びて

その手が、雲間から覗く夕日に負けないくらい顔が真っ赤になっているであろう私の頬を優しくひと撫でした

ふれられた彼の手のひらがとても温かくて、思わずその手を両手で包む

離れているときもいつもそばに感じられるように、彼の温もりを刻み込んだ




まだ少しだけ雨を含んだ空気の中、私たちは再び手を絡め、置屋への帰路に着く

この帰り道が、いつか二人同じ場所に帰るものになればいいなぁと思いながら、そっと彼に寄り添い、繋いだ手に力を込めた







~Squall・完~




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本当はこの話、シリーズのトリに持ってくるつもりでした

昨日までは…



なぜ今日上げたかというと

完全に私情なのですが、本日私ひとつ年をとる日でございまして

副長推しの自分の想いの向くままにそうしました


これまた個人的なことですが、私、とんでもない雨オンナです

ほんのちょっとだけ、思い入れを深くしました




この【Squall】という歌、本当にかわいいと、しみじみ思います

私 恋をしている 恋に落ちてる
もう隠さない 熱いときめき


“どストレート”が“どストライク”

もう、そのままです