空はキマグレのブログ

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6・三日目


晴れやかな目覚め…ってわけではなかったがまあいつもよりはいい目覚めだった


体を起こして眠気眼でリョーコが寝ているであろう方向を見た


…いない


ああ…洗面所か…


でも水が流れる音はしない…


まあいいやと思いしばしボーッとしてると急に玄関のドアが開いた


リョーコがパジャマ姿で現れた


「おお。あはよう」


「おはよう…」


「おとなりさん朝早いね」


おとなりさん?


「なんか話したの?」


「うん」


聞くところによるとリョーコは8時には目が覚めていていい天気だったので外に出て野良猫と戯れていたらしい


そして出社するところだったおとなりさんとエンカウントしてあいさつしたらしい


そしてリョーコは見かけない顔だったのであっ…みたいな顔をされたので自己紹介をしたらしい


「へえ…」


「んでさ。私はソーイチの彼女って言っといたから」


はい?


「…なんで」


「そのほうがフツーじゃん。それに正直に話して勘ぐられても面倒だし。妹っていっても歳離れてるし」


「でも…」


「まあ深く考えなさんな。あっ!でも変な気は起こさないように!」


起こしませんよ


そういうとリョーコは洗面所に入っていった


「まあいいか…」


しばらくしてリョーコが洗面所から出てきた


「今日は?」


ん?


「仕事。何時からなの?」


「ああ…。今日は休みだよ」


「そうなんだ。んじゃあゆっくりできるね」


「うん」


そういうとリョーコは布団にドカッと座りテレビをつけた


ぼくは立ち上がり入れ替わりで洗面所に入り朝の習慣を消化した


そして顔を拭きながら洗面所から出た


そして時計を見ると朝8時いつもと比べると早起きだ


ぼくはテーブルの前の座椅子に腰掛ボーッとした


しばらくしてリョーコが


「今日はお休みなんでしょ?」


「そう」


「んじゃあ。お出かけしようよ」


まあ…いいか


「お出かけね…どこに?」


「どこでもいいよ。折角ヒマなんだし。どっか」


「どっかか…今から?」


「今からはちょっと早いよ。んーお昼ぐらいからでいんじゃない?」


「まあいいか…行こう」


「よっしゃ」


そういうとリョーコはまたテレビをつまんなそうに見出した


昼までしばらくある…


ふとリョーコが朝会ったおとなりさんが気になった


というのも人付き合いが苦手なぼくは今まで近所付き合いというものをしたことがない


正直、おとなりさんがどんな人かなんて知りもしなかった


なのでつまんなそうにワイドショーをみているリョーコに聞いてみた


「ねえ…」


「ん?」


リョーコがくるっとコッチをみた


「おとなりさんってどんな人だった?」


意外そうな感じでぼくを見る


「どんな人?まあ優しそうなお兄さんだったけど…」


「そうなんだ」


ぼくはおとなりさんの性別すらしらなかったので一つ情報が増えた


「お話したこととかないの?」


「全然」


「マジで。それは…」


あーみたいな顔をした


「近所付き合いは大事だぜえ。今度からちょっとぐらいお話しなよ。おとなりさんなんだしね」


「ああ。そうするよ」


「多分若い人だと思うよ。歳はソーイチのちょっと下ぐらいじゃないの。見た感じね」


「ふーん」


まあ、今度出会うことがあれば挨拶をしよう


「そんなかんじ」


「りょーかい」


そしてぼくは朝メシの準備に取り掛かった


「ねえ。ゴハン作るけど何食べたい?」


一応、注文は聞いとかないとな


「そうだなあ…今はパンな気分かな」


またパンか。まあいいや


「了解」


それを聞いてぼくはパンをトースターに放り込んで


フライパンに油を敷いて卵を注いだ


しばらくしてホテルっぽいサンドイッチとスクランブルエッグのベーコン添えが完成


それをテーブルに運んで


「できたよ」


「おー」


ネコ並みの俊敏さでリョーコはテーブルの前に飛んできた


そして調味料と飲みものを運び席に着いた


「いただきます」


そういうと二人で朝飯をいただいた


先に食べ終わったぼくは何もいわずに皿を手に取り洗い場に皿を置いた


「ソーイチ…」


ん?


「ご馳走さまは?」


ああ。そうか忘れてた


「ご馳走さま」


「よし。」


そういうとリョーコはベーコンをかじりだした


しばらくしてリョーコは食べ終わったようで


「ご馳走さま」と言い洗い場に皿を持っていった


皿を持ってくとそのまま水を流し始めた


どうやら洗ってくれるらしい


「洗ってくれるの?」


そう聞くと


「うん。これぐらいはするよ」


いいとこあるな…


「んじゃあ…お願いしていい?」


「かまわんよ」


またそれか…


そういうとぼくはテレビに目をやった


変なカンジだ。いつも皿は自分で洗ってるのでいつもの状態と違うってのがなんか変に思えた


でもちょっとでもゆっくりできているこの時間はぼくにとって久しぶりの安息だった


それが短い時間であっても…



「自分をアカデミー俳優と思うのさ。自分はこうだからとか思わないでね


いろいろと想像してイカした仕事のできる自分を演じるのさ」


そういうことな…


「そう考えたら何もいわずにオバさんとかオッサンにいいように使われてるソーイチはイカしてる?」


そんなわけない!と思いながらもぼくは無言だった


「使い分けってことだね。ソーイチは仕事は出来るんでしょ?


だから後はオバサンと対等になればいいんだよ」


「うん…」


「だから今度そんなことになったら演技する。それまで考えとく。今はそれでいい


それでいいほうに結果を出す。それで大成功だよ」


「うん…」


「考えてもみなよ。女優とか俳優とか映画とかドラマじゃすごい色んな感情を出すのに


お笑い番組とか違う場所にいくと全然しゃべんなかったりするじゃん」


確かに…


「それと同じさ。まあ極端な例だけどね


でも仕事してるソーイチみたいな人は多分そうやって生きてると思うよ


自分のままでいるのはいい事だろうけど…このままじゃソーイチは疲れてイヤになっちゃうよ」


もう疲れてイヤになってるが…


演技か…


「ガマンできるのはすごくツライんじゃない?だからちょっと解消すればいいんだよ。」


出来たらね…


「あきらめと我慢の意思決定は人生を左右するんだよ」


ん?


「ソーイチは今あきらめてるフリしてずっと我慢してるだけ。


無駄に我慢しても人生にいい事なんて無いと思うよ」


そうかもしれない…


「だから私の教えはね…。無駄に我慢しないためにイカす自分を演技する


だから今はイメージを膨らますんだよ。想念は…現実化するんだよ」


考えるか…


「イメージするか…」


「そう。とにかく考えて、工夫して、やってみればいいんだよ


失敗したらまたやり直せばいいんだから」


でも…ぼくは失敗が怖いよ…


何も言わないぼくにリョーコはさらに言った


「とにかくやるんだ!失敗を恐れないで何もしないことを恐れろ!」


なんだよ急に…


「何もしなくて只考えてるだけなら誰にでも出来るよ。それに考えてるうちに勝手にじいちゃんになる


だから考えながら実行するのさ」


そんな簡単にいくかよ…


「まあ…時間はかかるかもしれないけどね…」


急にヴォリュームを下げたようにリョーコはつぶやいた…


驚くほどにポジティブなリョーコはただの能天気なのかもしれない…


でもリョーコの言葉にアンチな考えを巡らしながらもぼくの心はちょっとスッとしていた


「それもアリかもね…」


これしか言えなかった


「うむ。試してみる価値アリだよ。だって成功してる人はみんなそうしてるんだから」


「へえ…」


「ホントだよ。さっきのアドバイスもみんなスゴイ人の言葉だしね」


「なるほどな…そういうことか」


「何が?」


「いや…妙にしっかりしたこと言うなあと思ってさ」


「なによそれ!ウチはずっとしっかりしてるよ」


そうだね…


「まあいいや。そういうことだから


イヤことあったのは変わんないんだから今は寝て忘れる!おやすみ!」


そういうとリョーコがいる方向からバサッという音がしてそれから何もしゃべんなかった


ぼくはやれやれみたいに思いながら右を向き体を丸めた


でもいつものようなイヤコトフラッシュバックは無く


明日は休みだと普通のことを考えながら眠りに落ちていった






いつものように着替え、いつものように挨拶し、いつものように働いた


でも昨日と違ってた


この日は度重なるオーダーミスとツメの甘さが連発した


大して忙しくはなかったがたまにこんなことがある


どっかでミスが起こるとソレが連鎖的に伝染してしまう


それによって発生したストレスがまたみんなに伝染する


何かの本で読んだがストレスとミスの要因は伝染するらしい


恐ろしいかぎりだ…


それが頂点に達するとトップがイライラする


声を荒らげ、無駄にでかい声でみんなを罵倒する


もう注意とかいうレヴェルではない


完全に八つ当たり状態で


今度はベテランがイライラしだす


今度はベテラン勢が同じようなかんじで


ムカつく声で注意という名の八つ当たりをする


底辺部の人間のぼくはただ一生懸命するしかない


ミスらないように…ミスらないように


それでそっちに神経が向くと「遅い」と言われる


んじゃあ手伝うなり、他にまわるなりすればいいのにね


言うだけなら誰でも出来る


そういう人って勝手に上の人間だと思って責任感を盾にする


それで自分は一生懸命で自分だけ傷ついてるみたいな言い方をする


それだけでもうめんどくさい


でもぼくはそんなことも言えず黙って作業を続ける


ただこの時間が早く過ぎるように…


これ以上悪くなりませんように…


ようやく落ち着いてホッとしてると


「手が空いてるならこっちこっち片付けてよ!」


ホッとしてる後ろからいつものオバさんの声がした


振り返るとムッとした顔をしてぼくを見てる


ぼくはこっちで片付けをしてるのだが…


言い返したとこでイヤミを言われるかシカトされるのでもう逆らわないようにしてる


正直、めんどくさい


はいはい…みたいなかんじでそっちを片付けた


先輩だからってだけで自分の観点だけで確認もせずに人を使うのは愚かだ


正直、そんな人間は人として大したレヴェルではない


ただ「仕事が出来る」だけだ


「人としてレヴェルが高い=仕事が出来て金を持ってる」なんて考えなんてナンセンスだね


とか思いながら当たり障りのないようにそつなくこなす


こんな汚いテクニックだけは物にしてる自分が気持ち悪い


仕事が終わって久しぶりに気持ちが悪い


マネージャーはピリピリして挨拶してもロクに返事もしない


ちゃんと挨拶してくれるのは店長だけ


でもマネージャーはバイトの若い女の子とベテランのオバさんには作り笑いして挨拶をする


多分、ぼくは一生彼を尊敬することはないな…


そう思うと朝にリョーコが言っていたことがわかる気がする


社交辞令としての挨拶だがロクに返事ももらえないと正直、挨拶やってる意味もないし、アホらしい


だから家でロクに挨拶をしないぼくは彼と似たようなものなのだろうか?


そう思うと無償にイヤになった


単純で当たり前すぎることかも知れないけど…挨拶ってちゃんとしなきゃダメだな


自分で体験して、自分で感じて、初めてわかる


人生の積み重ねとはこういうものだろう


人がどんなに言っても頭に入らないのに、一回経験すると言われたことがフラッシュバックする


…わからないけどぼくは心の中でリョーコを思い出し感謝した


そしていつものように車に乗って家に変える


いつもならなんか買って帰るけど、昨日リョーコがいっぱい食材を買ってきていたので


今日はいいや


それよりもぼくは今日の出来事によってモヤモヤしていた


なんでだよ!って思ってモヤモヤ顔で帰宅した


家のドアを空け靴を脱いでもずっと下を向いていた


「おかえり!」


きみは元気だな…


「…ただいま」


あからさまにテンションが下がっていたぼくを見てリョーコは


ん?見たいな顔をしたが


そのままテレビを見た


ぼくは何も言わずに風呂に入り、思い出したくも無い今日のことをウジウジと思い返した


そして、大しておなかはすいてなかったのでそのまま布団を広げ横になった


「ねえ…」


ん?


「ごはん食べないの?」


「今日は…なんかいいや。おなかすいてない」


「そう?ゴハン食べないと元気でないぜ」


多分、ぼくの重苦しい空気を読み取ったのか気を使ってくれたみたいだ


「うん…でもまあ…いいや」


そういうとぼくは右にごろんと寝返った


部屋にはテレビの音だけが響いている


時間は12時前


多分、リョーコは後2時間ぐらいは起きてるんじゃないかと思いながら


ぼくはずっと横を向いて寝ていた


すると


「なんかおもしろいテレビ無いし寝よっか?」


そういったので


ぼくはうんと言って立ち上がり電気を消した


…正直寝れない


イライラして、モヤモヤして…


また腕を組んで上を向いて考えてると


「ねえ?起きてる?」


リョーコが話しかけてきた


「起きてるよ…」


「なんかヤなことあった?帰ってきてからなんか重いよ」


「まあ…ヤなことっていうか…めんどくさいことかな…」


そういうとガサッと布団が大きくはためく音がした


「よし!しょーがないな!昨日に引き続きリョーコ先生が聞いてやろう!」


そういうとぼくはそのままの体制のままで目線だけ上にちょっと向けて


ふぅとため息をついて話をすることにした


そのときすんなり話をしようとおもったのは何故か?


正直全然わかんない


ぼくは自分でもきっとそうだと思うぐらい人間不信である


というか人間嫌いである


人は汚いし、人は人を利用する


自分に都合が悪いとすぐ人のせいにして言い訳する


ぼくもそうだ


だから人間は嫌い!


って思って誰も信用したこと無かった


親ですらだ!


というか親がウソつきだと思った


結局、どんだけ奇麗事を並べても人の本質は悪


あんなにぼくらに注意や生きる指針を示していた親や教師も結局ウソをついた


自分のことは棚に上げ、自分はこうだったとか、わかりきったことをあたかも正義のように語る


気持ち悪い


間違いを指摘するとごまかし、言い訳して、逆ギレした


それで生意気だとかとか言われた


所詮は親だろうが教師だろうが自分の体面を保つのに必死なんだと思った


でもそれで素直に謝らなくていいわけではない


ぼくらには素直に謝れって言うのに、自分は言い訳して結局圧力をかけて誤魔化す


なんて矛盾と不公平。まるで喜劇だ


それからぼくは人を信用したことない


ぼくと同じようなことを思っていた人間は歳をとると


ガマンすることだ


社会とはそういうところだ


大人になった


とかいって今まで思っていたことを現実という言い訳を用意して歳をとる


気持ち悪い…


だからぼくはとりあえずめんどくさいのと気持ち悪いので


人を信じるのをやめた


でも疑うのもめんどくさいので


もう触れるのもやめた


それが一番楽だった。傷つかなくて済む


そんな人間に絶望してるぼくが


お調子者のリョーコが軽い感じで言ってきた提案に何の抵抗も無く乗ったのは


後で考えれば自分でも驚くべきことだった


後で考えれば、母親のように口うるさいがぼくに興味を示してくれてる


リョーコに知らず知らずのうちに心開いてたんだろう…