僕が見た永田町~素人しか変えられない~⑩
オープンエントリーファイナリストに残るかどうかもわからないまま、僕は全国を回り続けた。
決まってから動いていては遅い、の一心だった。
ファイナリスト発表は3月中旬。
4月1日からネットでの投票が始まるが、選挙期間は40日程しかない。その期間例え一日100人に会えたとしても、4000人程度にしか達しないのだ。
そう思うと、居ても立ってもいられなかった。
ネット選挙とはいえ、顔を突き合わせて語り合い、僕自身の考え、人柄をわかってもらわなければ票に結びつくことはない。それが前回の選挙を通じて思い知った現実。
知名度がなく、支持母体もなければ、この地道な方法しか、有権者の心を動かすことはできないのだ。
各地を回る中、改めて実感したのはオープンエントリーの認知度の低さ。
とにかく知られていない。
ほぼ100%の確率で。
「今年7月にある参議院選挙の予備選みたいなものです」と説明しても、「へー」っと薄いリアクションが返ってくる場合がほとんど。
「これまで自民党は、比例区では支持母体のある人もしくは著名人にしか公認をしてこなかった。今回、ネット選挙というオープンな場で選ぶことは画期的なことなんです」と熱く語っても、「ふーん」って感じ。
そもそも、政治に関心が低い上に、参議院選挙比例区で採用されている非拘束名簿式すら正しく理解されていないのだから、当然といえば当然か。
国会議員の選出方法を国民が正しく理解していないというのは大変な問題だと思うが、現状それを批判している身分ではない。
一方で、僕が政策として掲げた「ライブによる地方創生」については、総じて好意的に受け止めてくれる人が多かった。
「ライブ、つまり、生のエンタテインメントには、人の気持ちを前向きにする力がある。傷ついた心をそっと癒やしてくれる力がある。加えて経済効果だって抜群。ライブ会場に足を運んだ人たちは、その地でご飯を食べ、お酒を飲み、宿泊もする。タクシーだって使う。早い話、たくさんのお金を落としてくれる。
このライブを地方が抱える様々な問題の解決のために使わない手はない」そう話すと、オープンエントリーの話の時とは打って変わって多くの人が熱心に聞き入ってくれた。
手応えあり。
時に、「ライブなんかよりも、社会保障の問題とか、安全保障の話とか、もっと国民の関心のあることを訴えないと票にならないと思う」といった趣旨のアドバイスもいただいたが、僕的にはどうもしっくりこなかった。
これまでのキャリアからして、知識が浅いこともあったし、比例区選出の議員こそ、ある分野に特化した存在であってもいいのではと考えたからだ。
それほど、生のエンタテインメントには現状、日本が抱える様々な問題を解決する力を秘めているという確信もあった。
そして、ひと月を過ぎた頃。
神戸にてミニ集会を開いている最中、自民党から電話が入った。
「ファイナリストに選ばれました。3月12日に記者会見をやります・・・・・」
当然ながら喜びはなかった。身の引き締まる思いとはまさにこのこと。自然とスマフォを握る手に力がこもっていた。