僕が見た永田町~素人しか変えられない~④ | 伊藤ようすけオフィシャルブログ Powered by Ameba

僕が見た永田町~素人しか変えられない~④

僕が見た永田町~素人しか変えられない~④

 

「このままでは、伊藤さんを自民党は公認しないと思います」
この日が初対面のM選挙対策委員長から、いきなりこう切り出され、僕は返す言葉がなかった。
もちろん、言いたいことはあった。
自民党員を300名集めるというノルマはちゃんと果たしていること。
前回の反省を踏まえ、地方を回り、人脈を広げていること。
ただ、いずれもM氏の言葉への反論に足りるとは思えなかった。
それほど氏の面持ちには、いかなる議論も受け付けないある種の覚悟がみなぎっていたのだ。

「伊藤さんもご存知の通り、比例区で公認する候補には、全国的な知名度があること、もしくは確実に票に結びつく大きな団体があること、このいずれかの要素を自民党は求めます。残念ながら、この2年の間に、伊藤さんの知名度が著しくあがったとは思えないし、どこか強力な支持母体がついたという形跡もない。となると、前回のように公認する可能性は極めて低いということになるんだよね。・・・わかるよね」
この場所にたどり着くまでの間、心の奥底で抱いて淡い希望が、音をたて崩れいく。
現状の活動の程度では、当選ラインには遠く及ばない。だから、ノルマをクリアしていようと、地方を回っていようと、自民党は公認はしない。
M氏は、こう言っているのだ。
前回の戦いで、知名度もさることながら選挙における支持母体の必要性を痛いほど感じていたにもかかわらず、また同じ失敗を繰り返そうとしている自身が、腹立たしくもあり、情けなくなった。
諦めるしかないのか・・・。
頭の中で考えを巡らすが、妙案は浮かばない。

「ただね・・・」
言葉を続けたM選挙対策委員長の顔が突然柔くなった。
「実は今度、オープンエントリーという新しい試みに自民党はチャレンジすることになってね・・・」
オープンエントリーについては、新聞の報道で知っていた。
ネット選挙によって、自民党公認候補を決しようとという新たな試みである。
記事を読みながらも、自分には関係のないことだと思っていた。
「前回も公認されたわけだし、今自分はこうして指示されたことやっているわけだし」というのがその大きな理由。
ただ頭の片隅で、この戦いに挑むことが一瞬過ぎったのも事実だった。そして、すぐに否定した。
とても、勝つ自信がなかったからだ。ネット上での戦いとなると、とてつもない強敵が現れるのではという予感があったゆえだ。
したがって、関係のないことだと言いきかせたといった方が正確かもしれない。

同席していたB衆議院議員がオープンエントリーの詳細について説明を始めた。
でも上の空で、頭に入ってこない。
この提案を受け入れなければ、公認されず、きっと道は閉される。
だからといって、オープンエントリーで勝てる自信も今はない。
堂々巡りが続いた。
「もし、このオープンエントリーを勝ち抜けば、自民党は当然、伊藤さんにも公認を出すということになるのだけど、やってみない?」
B氏に問われたが、返答に窮した。
両氏の視線を痛いほど感じるが、いずれとも視線を合わすことができなかった。
いたずらに時間だけが過ぎていく。

⑤に続く。