元日本人の在留資格(ビザ)と日本の永住権

元日本人の在留資格(ビザ)と日本の永住権

アメリカを始め海外から日本へ帰国・移住する元日本人、日本人with外国人配偶者の在留資格(ビザ)申請を専門とする行政書士のブログです。

ひとつ前の投稿で、日本に帰国された元日本人ご夫婦の、市役所での転入手続き(住民票への登録)と国民健康保険の加入の手続きに同行したというお話をしました。市役所での手続きが午後2時過ぎに終わりましたので、次に銀行口座開設の手続きに同行しました。銀行は3時までしか開いていませんので、何とか滑り込んだという感じです。

 

実は銀行口座の開設には、ご夫婦も私も少し不安を感じておりました。というのは、このご夫婦は「外国人は日本に入国してから6か月たたないと、銀行口座を作ることができない。」という噂をどこかで耳にしていたからでございます。ただ、当事務所も最近まで、お手伝いした元日本人の方から「銀行口座を開設できなかった」というお話は聞いたことがありませんでしたし、つい数か月前にご帰国された他の元日本人の方から「口座開設にかなり苦戦したけど、何とか開くことができました。」というお話を聞いたばかりでした。その方からは「住民票に通称名で漢字表記を載せたら、うまく行った。」というお話も聞いておりましたので、今回のご夫婦の場合も、市役所での転入手続きの際、日本でもともと使用していた漢字の名前を通称名として表記しました。

 

このご夫婦の税務を担当している日本側の税理士からは「銀行は融通が利かないことが多いから、信用金庫がいいと思いますよ。」と助言を受けておりましたので、これから住む予定のマンションの近くにある信用金庫支店に行きました。

 

今では日本人でさえ、銀行で新規口座を開設することは容易ではありませんし、ましてや外国籍の方に関しては最初から厳しい態度で臨んでくる金融機関が多い中、この信用金庫はご夫婦の事情を汲んでくださり、元々日本人だったということもあったかと思いますが、口座を開設させてくれるという感じで進んでいきました。申込用紙にも記入し、デポジットである現金も預かってくれまして、身分事項を証明する諸々の書類もお渡しし、手続きは順調に進んでいるかのように見えました。

 

それから、その支店が本店と資料・情報のやり取りをして、口座開設を認めてもらおうとしていたのだと思いますが、とても時間がかかりました。途中で先ほどとは違う担当者が来て、細かいことを聞いてきたりもしました。そして1時間半くらい店内のロビーで事の成り行きを見守っておりましたが、結局「申し訳ございません、今回はお口座は開設できません。」という回答が出ました。

 

担当者が言うには、「外国人が入国してから6か月以内に口座を作る場合は、相応の理由が必要」とのことでした。ご夫婦は「理由も何も、日本で生活していく上で、銀行口座がないと困るではないか。」と説明したのですが、「おっしゃることは十分理解できるのですが、ただ生活の理由、というのではダメなんです。」と申し訳なさそうな表情で言われました。

 

おそらく大手の都市銀行と地元に密着している信用金庫とは、外国人が口座を開設するにあたっての審査基準が違うとは思いますが、その信用金庫の基準としては「5大公共料金の支払い・受け取りの指定口座となっている。」ことがひとつの目安となっているようでした。

 

その5大公共料金とは、電気・ガス・水道・NHK受信料、そして公的年金だそうです。分かるような、でも今一つよく分からない説明でしたね。「入国してから6か月以内」に簡単に口座を作らせてしまうと、日本に生活の実態がない外国人に口座開設してしまい、不正な送金に悪用される可能性があるからでしょうか。公共料金の決済口座として開設しますと、日本に生活基盤があり、不正の温床になるリスクが多少減るからなのでしょうか。

 

おそらく、外国人に自由に口座を開設させても、不正な目的に利用される確率は、正しい用途に使用される割合と比べて低いはずではありますが、たとえ少ない可能性であっても、たった1回の事故も防がなければならない観点から、金融機関はみな、外国籍の方の口座開設にはものすごく慎重に、ナーバスに、及び腰になっているんだということが分かりました。

 

口座開設を断られた元日本人夫婦のだんな様の方は、「最初に、口座を作らせてくれるって言っておきながら、書類をたくさん書かせておきながら、何だ今更」とかんかんに起こっていらしたのと、申し訳なさそうにうなだれている信用金庫の行員の方の表情が印象的でした。奥様の方は、これから住むマンションに最も近い銀行であることと、もう少し待てば今受け取っている年金の指定口座を変更できることで、この信金を引き続き推しているのですが、だんな様の気持ちが収まらない限り、それも難しいかもしれません。

 

このようなことがあり、2時間半くらいの時間を掛けながら、結局は銀行(信金)での口座開設はこの日は失敗に終わりました。

 

しかし、「もともと日本国籍を保有していたけど今は外国籍」という同じ条件で、銀行口座を開設できた人とそうでない人の差がどこにあるのか、今も分からずにもやもやしております。引き続き、当事務所で関わったクライアント様から機会を見てお聞きし、原因を考えて参りたいと思います。そして、将来にご帰国される元日本人の方に適切なアドバイスをしていきたいと考えております。

 

今まで、多くの元日本人の方のご帰国の在留資格手続きをして参りましたが、先に行った市区役所への転入・国保の手続きや、銀行口座開設などは、直接に関与したことはございませんでしたが、苦戦している方が多いことが分かりましたので、これからなるべく時間を作りまして、お客様が日本にご帰国された直後の、生活に不可欠な役所手続き、銀行の手続きなどにも同席して参りたいと考えております。

 

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