記紀 | 夏炉冬扇の長袖者の尉のブログ 

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伊藤浩士先生の小日本秘史・時々掲載予定 第19回  記紀 

 

 記紀と書けば日本書紀と古事記のことになりますが、この二書に限らず、紀と記の二通りの史書があります。日本書紀、続日本紀、続日本紀、続日本後紀、などは紀となっており、古事記、扶桑略記、太平記、越後軍記、信長公記、太閤記、徳川実記、明智軍記、など記となっている史書は多数あります。

 

 記は書き記すことで、これはどのような書籍にも当て嵌まります。紀は特殊で、歴史書のなかで国王・皇帝の実績を書いたものを本紀、または紀と呼び、紀となっている歴史書は国王・皇帝に関する内容になっているのです。

 

 日本書紀は、日本書という名の歴史書のなかで、天皇の実績を書いた紀という意味なのです。日本書紀という固有名詞ではなくて、日本書の紀であるのが正しく、それがくっ付いてしまって一体化してしまったものと考えるべきなのです。続日本紀、日本後紀、続日本後紀、なども同じ意味であり、天皇の実績を中心に書かれている書籍なのです。従って、そうでない一般の事件や人物を扱った歴史書は記になります、六国史が終わったあとは紀と称される書物はありません。

 

 徳川実記は江戸幕府の公式な歴史書ですが、紀としていないのは、天皇ではない徳川将軍の記録ということで、遠慮して記にしたのです。古事記は記とすることにより、こちらは日本書紀とは異なり、天皇に限らず広く多様なことを掲載しますよと宣言していることになります。

 

 日本書は編纂のときの計画としては、天皇の記録である紀以外に、豪族やその下の階層の人たちのことや、地方の歴史なども編纂する予定でしたが、貧乏な後進国のことで、紀だけを作って力尽きてしまい他のものの編纂ができず、偏った内容の歴史書になりました、それを六国史では踏襲したので、史書にある日本の古代史の景色そのものが歪なものになってしまいました。