解雇、退職勧奨、配置転換、パワハラ、セクハラ、残業代、いじめ、名ばかり管理職、派遣切り、是正勧告などなど挙げればきりがない程、巷には労務問題を抱えている企業が存在します。

 

露見して問題になるものもあれば、水面下で問題となりつつあるものまで含めれば、数えきれないことでしょう。

中でも、近年、労働局での相談件数で増えてきている事項が、いじめ・嫌がらせに関する事項だそうです。

人間関係の絡む問題は複雑化することも多く、法律で定められていることだけでは解決しないケースもあり、解決に苦慮する企業が少なくありません。

 

有名なハインリッヒの法則では、1つの重大事案の陰には29の軽微な事案があり、その背景には300の異常が存在する、とされています。

 

ということは、問題が顕在化しているということは、その背景にはもっと多くの問題となりつつある事案が発生していることを意味します。

また、人間関係を端にする人事労務トラブルでは、1つの案件が重大事案に発展する可能性も含んでいるものも多く、事後対応ではどうしようもない場合も少なくありません。

 

では、その根本要因は何でしょうか?

仕組みや制度の問題でしょうか。

従業員個人の問題でしょうか。

偶然でしょうか。

 

この要因を紐解く為には、企業の構造を理解することが近道です。

そもそも、企業の構成要素は「人」ではないでしょうか。

企業はモノ、ヒト、カネ、と言われますが、人がいなければ何も始まらないように、人事労務問題には必ず「人」が絡んでいる、という当たり前の視点が改めて見えてきます。

 

そして、企業は1人1人の「人」によって構成されていますから、その1人1人の「人」の人間関係が潤滑であればある程、人間関係を端にした労務問題に発展する可能性が低くなるはずです。

 

すると、企業としては、できる限り1人1人が働きやすい環境を整備したり、従業員どうしが潤滑にゆく仕組み作りをできるかが肝となってくるのではないでしょうか。

 

「千条の堤も蟻1穴より崩れる」

韓非子の言葉です。

 

小さなほころびが大きな大事案に発展し、取返しのつかないことにつながる、ということを戒めた言葉です。

目の前の業務をこなすだけでなく、問題が顕在化してから対処するのではなく、働きやすく共に成長できる環境を整備する。

 

そんな資質をもった人物をリーダーとして任命する。

 

表面上、企業の発展に直結しなさそうなことが、実は企業を守る上で非常に大切なこともある。

「予防労務」とも言いますが、人事労務問題になる前に、就業規則を整備したり、採用を見直したり、就業環境を整備したり、法的未達事項がないかチェックしたり、やっておくに越したことがないこと。考えればたくさんあります。