普段からメイクしない君が薄化粧した朝
In the morning you wore light makeup for the first time in a while
始まりと終わりの狭間で
Between the beginning and end of life
忘れぬ約束した
I promised for the things I never forget
花束を君に贈ろう
I send you a bouquet of flowers
愛しい人 愛しい人
To my dear, my dear you
どんな言葉並べても
No matter how I express in words
真実にはならないから
Truth cannot be expressed
今日は贈ろう 涙色の花束を君に
So I send you a bouquet of tear-colored flowers today
毎日の人知れぬ苦労や淋しみも無く
If life was without hidden struggle or loneliness
ただ楽しいことばかりだったら
And just full of fun
愛なんて知らずに済んだのにな
I wouldn’t get to know the meaning of love
花束を君に贈ろう
I send you a bouquet of flowers
言いたいこと 言いたいこと
There are countless words
きっと山ほどあるけど
I wish I could tell you
神様しか知らないまま
Though it remains known only to God
今日は贈ろう 涙色の花束を君に
So I send you a bouquet of tear-colored flowers today
両手でも抱えきれない
Appreciating more than a handful of
眩い風景の数々をありがとう
dazzling sceneries to remember
世界中が雨の日も
Even when it rained all over the world
君の笑顔が僕の太陽だったよ
Your smile was my sun
今は伝わらなくても
Though my words don't come across now
真実には変わりないさ
I know truth never changes
抱きしめてよ、たった一度 さよならの前に
Hold me one last time before saying goodbye
花束を君に贈ろう
I send you a bouquet of flowers
愛しい人 愛しい人
To my dear, my dear you
どんな言葉並べても
No matter how I express in words
君を讃えるには足りないから
Never enough to applaud you
今日は贈ろう 涙色の花束を君に
So I send you a bouquet of tear-colored flowers today
この曲は、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の主題歌に起用されましたね。
製作にあたり、宇多田ヒカルはこう語っています。
「NHK朝の連続テレビ小説が国民的な番組なので、意識的にいつにも増して間口を広げる作詞をしました。オフコースとかチューリップ、エルトン・ジョンの『タイニーダンサー』をイメージして軽やかな感じに『開いてる』曲を目指して。いろんな状況で、いろんな人に当てはまるといいな、と思います」
なるほど、最初に聴いた印象は、「みんなのうた」のような親しみやすさでした。
活動休止から復帰後の作品だったので、今までとガラッとイメージを変えたのかなと思いました。
ところが、歌詞を読んでみると、やはり一筋縄ではいかない深みがあります。
まず、出だしの「普段からメイクしない君が薄化粧した朝」にはっとさせられます。
大切な人を亡くし、心にぽっかりと穴が空いてしまったような虚無感が、この一節で浮かび上がってきます。
もし自分の大事な人だったら…と想像するだけで、胸が締め付けられます。
さらに、2番の冒頭
「毎日の人知れぬ苦労や淋しみも無く ただ楽しいことばかりだったら 愛なんて知らずに済んだのにな」
楽しさではなく、悲しみが愛を生むというのは、人生の深淵ですね。
明るいテンポの曲にのせていますが、歌詞だけを見るととても重い内容です。
このような、ある意味パーソナルな悲しみのエピソードを、朝の連続小説の主題歌として書き上げたところに、宇多田ヒカルの凄味を感じます。
以前、NHKの番組「SONGS」で、「自分はどの面においてもアウトサイダー(部外者、馴染めない人)であると感じてきた。だからこそ、誰もが感じる疎外感や孤独を表現できる」という意味のことを語っていました。
いわば、これは本当の「みんなのうた」になりうる曲なんだなと思います。
話は少し飛躍しますが、子供向けの童話や児童書を大人になってから読んでみると、あらたな感動を得ることがあります。
私が好きなオスカー・ワイルドの「幸福の王子」の中の一節です。
“More marvellous than anything is the suffering of men and of women.
There is no Mystery so great as Misery.”
(この世で最もすばらしいのは、人々の悲しみだ。 惨めさにまさる神秘はない)
宇多田ヒカルの詩の世界にも通じるものを感じます。
彼女が日本人で、その詩を日本語で聞けることに感謝したいです。
