今回は整列集合の族について説明していきます。
補題1
(Wλ)λ∈Λを集合Aの部分集合族とする。
∪(Wλ)λ*∈Λ=Wとする。
それぞれのWλには順序≦(λ)が定められていて下の条件を満たすとする。
①(Wλ,≦(λ))は整列集合である。
②λ,λ*∈Λを異なる2元とすれば(Wλ,≦(λ)),(Wλ*,≦(λ*))の一方は他方の切片となっている。
このとき次の⑴〜⑷が成立する。ただし、x,y∈Wを任意の元とする。
⑴x∈Wとy∈Wとの両方を満たす元λ∈Λが存在する。
⑵W上の関係を次のように定める。⑴を満たすλを1つ取る。
このときx≦(λ)yのときに限りx≦yとする。
このとき関係≦はλの取り方によらない。
⑶⑵の状況において≦は順序関係である。
⑷(W,≦)は整列集合である。
⑸⑵の状況において下が成立する。
・λ∈Λを任意の元とする。このとき(Wλ,≦(λ))は(W,≦)自身と一致するか、その切片となる。
(証明)
⑴x,y∈Wを任意の元とする。x∈Wλ,y∈Wλ*となるλ,λ*∈Λをとる。
ここでWλ,Wλ*のうち一方は他方の切片であるからWλ*がWλの切片であるとしても一般性は失われない。
このときx∈Wλ,y∈Wλ*⊆Wλであるからこのλが⑴を満たすものである。
⑵x,y∈Wλとする。また、x,y∈Wλ*であったとする。
ここでWλ,Wλ*のうち一方は他方の切片であるからWλ*がWλの切片であるとしても一般性は失われない。
このとき順序≦(λ*)と順序≦(λ)とはWλ*上では一致する。
⑶x,y,z∈Wを任意の元とする。⑴と同様にx,y,z∈Wλを満たすλ∈Λが存在する。
順序関係の3つの条件を全て満たすことを示したら良い。
①x≦λxであるからx≦xである。
②x≦y,y≦xだとする。x≦(λ)y,y≦λxであるからx=yである。
③x≦y,y≦zだとする。x≦(λ)y,y≦(λ)zであるからx≦λzである。
以上より≦はW上の順序関係となる。
⑷Wが整列集合とする。Mは空でないWの任意の部分集合とする。順序≦に関するminMが存在することを示したら良い。
M=∪(Wλ)∈ΛであるからM∩Wλ=∅であるようなλ∈Λが存在する。
M∩WλはWλの空でない部分集合でありWλは整列集合であるから≦(λ)に関する最小元a=min(M∩Wλ)が存在する。
このaが実はWの≦に関する最小元であることを示す。すべてのx∈Wについてa≦xが成立することを示せば良い。
(イ)x∈Wλのとき
x∈M∩WλでM∩Wλの最小元がaだからa≦(λ)xである。よってa≦xが成立する。
(ロ)x∈Wλでないとき
x∈Wλ*となるλ*∈Λとなる元が存在する。WλとWλ*について一方は他方の切片である。
x∈Wλではなくx∈Wλ*であるからWλの切片となる。
Wλ=Wλ*<y>(y∈Wλ*)だとする。
xはWλの元ではないのでy≦xが成立する。またa∈Wλよりa<yが成立する。
よってa<xが成立するのでa≦xが成立する。
以上よりa=minMであるからWは整列集合となる。
⑸Wλについて下の(※)を示す
(※)x∈Wλかつy∈Wかつy<x⇒J∈Wλ
x,y∈Wλ*となるλ*∈Λをひとつとる。
WλとWλ*とは一方が他方の切片になっている。
(i)WλがWλ*の切片のとき
Wλ=Wλ*<z>(z∈Wλ*)とするとx<zが成立する。また、y<xよりy<zが成立する。
よってy∈Wλ*<z>=Wλが成立する。
(ii)Wλ*がWλの切片のとき
y∈Wλ*⊆Wλである。
よって※が成立するので補題1よりWλはW自身またはWのある切片と一致します。(証明終)
系
(Wλ)λ∈Λを集合Aの部分集合族とする。各WλはAの部分順序集合として整列集合であるとする。
λ,λ*λ∈Λを異なる任意の2元とするとWλとWλ*とは一方が他方の切片になっているとする。
このとき次の⑴,⑵が成立する。
⑴∪(Wλ)λ*∈Λ=WはAの整列集合である。
⑵λ∈Λを任意の元とするとWλはW自身と一致するかまたはその切片となる。
練習問題
補題5を用いて上の系を示せ。
次回は今まで示してきた整列集合を用いて新たな補題を証明します。
では、源義経に感謝。
参考文献
・『集合・位相入門』、松坂和夫