今回は最大元、極大元とその性質について説明していきます。
Aを順序集合とします。
(定義)
a∈Aについて下の条件が成立するとき、aを最大元といいます。
(条件)任意の元x∈Aに対してx≦aが成立する。
条件の不等式を逆側にして、最小限も同様に定義されます。
(定義)
a∈Aについて下の条件が成立するとき、aを極大元といいます。
(条件)a<xを満たす元x∈Aが存在しない。
条件の不等式を逆側にして、極小元も同様に定義されます。
最大限の性質
・最大元は存在するとは限らない。
・最大限が存在すればそれは一意的である。
証明
(1つ目)
例えばA=R(実数全体からなる集合)で実数の大小によってRは順序集合になりますがこの集合には最大元は存在しません。
(2つ目)
a,a’がAの最大元だと仮定します。このとき、a=a’を示せばよいです。
a∈Aが最大元でa’∈Aであることからa’≦aが成立します。
a’∈Aが最大元でa∈Aであることからa≦a’が成立します。
a’≦aかつa≦a’が成立し、≦は順序なのでa=a’が成立します。(順序の定義→ https://ameblo.jp/itoharumath/entry-12581928946.html)
極大元の性質
・極大元は存在するとは限らない。
・最大限は存在すれば極大元はただ1つ存在し、最大元と一致する。
証明
(1つ目)
例えばA=R(実数全体からなる集合)で実数の大小によってRは順序集合になりますがこの集合には極大元は存在しません。
(2つ目)
まず極大元が存在することを示します。
a∈Aを最大元とします。a<bとなるb∈Aが存在したと仮定します。
a∈Aは最大元でb∈Aなのでb≦aが成立します。
a<bよりa≦bが成立します。(a<bとはa≦bかつa≠bのことなので)
b≦aかつa≦bで≦は順序なのでa=bが成立しますがこれはa<bに矛盾します。
よってa<bとなるb∈Aが存在しないのでaはAの極大元です。
したがってAには極大元が存在します。
次に、Aの極大元がただ1つしか存在しないことを示します。
bがAの極大元だとします。aが既にAの極大元であることは示したのでb=aを示せばよいです。
a∈Aは最大元でb∈Aなのでb≦aが成立します。
ここでb<aだとするとbがAの極大元であることに反するのでb=aとなります。
練習問題
集合A={a_1,a_2,a_3,a_4}に対して順序が下で定められるとき、最大値、極大値が存在すればそれを求めよ。存在しないならばそれを示せ。
①i=jのときに限りa_i≦a_j
②i≦j(実数として)のときに限りa_i≦a_j
③「i=j」または「i=2かつj=3」のときに限りa_i≦a_j
今回は最大元(最小限)や極大元(極小元)の定義とそれらが必ずしも存在するとは限らないということを示しました。次回はそのような観点で集合を分類したり、新たな概念「最小上限(sup)」などについて説明していこうと思います。
前回の練習問題の答え
練習問題1
①のみ
練習問題2
①と②のみ
練習問題3
②のみ
では、源義経に感謝。