空腹地獄 | Just a Rock'n Roll

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Kaz Itoh's Blog

※闇投稿シリーズの最終回のつもりです
ハイジの様に山奥で黙々と育っていた6歳児の俺の前に、俺を捨てたハズの母親が突然現れ、もう一度一緒に暮らしたいと泣いて詫びを入れてきた。

親は死んだものとして生きていた俺としては、幼心ながらも許せる訳が無く気絶寸前。現実を受け入れたくない時の防衛本能なのかもね。だけど俺は子供。別な家に預けられた兄貴と共に、あっけなく知らない町へと連れて行かれたのだよ。


人と喋らず、我慢して、わがまま言わず、肉も魚も野菜も食べずに育った年月を地獄と言うなら、その先にさらなる本当の地獄が待っていたのだね。
 

知らない小さな町の集合住宅(昔でいう長屋)の一部屋で、母と兄と俺の3人での生活が始まったのだが、その部屋に母が一緒にいる事はほとんど無く、実質は小5の兄貴と小1の俺の2人暮らし。しかも、家には食料がほとんど無くて、時々冷蔵庫に入っていたのはコカ・コーラと魚肉ソーセージ。

毎日お腹が空いて空いて、お腹が空いている事以外を考える事も出来ないほど苦しくて涙が出てくる日々。兄弟二人そろってガリガリ君。

ワンピース(アニメ)で、サンジが子供の頃に、ゼフと無人島に流され助けを待つシーンがあるけれど、そのシーンの会話は当時の自分を思い出して涙が溢れるよ。

そんな時代を一緒に過ごした兄貴と酒を飲んだ時に兄貴が

「あの時の事を思い出すと今でも涙が止まらない。あの時に先の事も考えずに一緒に暮らそうと言った母親を今でも恨んでいる」

と呟いた。


そんな毎日腹を空かせている小1の俺の前に、何故か食べ物を持ってきてくれる近所の同世代の子供「しげる」が現れた。

訳はわからないが、なんだか良いヤツだよと思い、一緒に遊ぶ様になった。

他にももう一人、名前は忘れたけれど3人組。なんか知らないが、毎日違う家の前で、しげるは俺に「玄関の前にいてね。だれか来たら教えて」って言って、しげるは家に入っていく。

そう、知らぬ間に俺は少年窃盗団の見張り番になっていたのだよ。

だから、しげるはいつでもお金を持っていて、俺に食べ物を買って持ってきてたのだよ。

山奥で育った俺には、それが悪いことかどうかも判断しようが無く、しばらくして、しげるが捕まった後に、悪い事なんだよと大人に教えて貰ったんだよね。

 

しげるが捕まってからは、俺に待っていたのは空腹の日々。