《NHKラジオ 講演》より
【講師:早稲田大学講師・コヤマケイタ氏】
ニュートンは万有引力の法則を発見するという成果にもかかわらず、発表されるとデカルト主義者から激しい攻撃がしかれるようになった。
「『天体どうし、かなり離れているのに、なんにもない空間を重力はどうやって伝わるのか。』を説明しないで、力学を展開するのはおかしい。」と。
つまり、「重力の原因を一言も触れていないニュートンの力学は、科学の体系として失格である。」というのである。
この質問に対してニュートンは、「例え原因が分からなくとも、重力の作用を数学で表現して、それをいろいろな現象に適用して、運動がどのように起きるのかを説明できれば、それで十分ではないか。」と、開き直りとも取れる回答をしたのである。
このことは、デカルト主義者が「WHY」に重点をおいたのに対し、ニュートンは原因追究を放棄して「HOW」に力点をおいた、と言える。
その後、ニュートン流の考え方とデカルト流の考え方の対立は続く。
しかし、時が経つにつれ、ニュートン力学は数々の目覚しい成果を収め、その有効性はイギリスだけでなく、大陸でも認められるようになる。
基本法則が何故成り立つのかという、原因の追究をひとまず放棄して、「HOW」に力をいれると、次から次へと成果が出てくる。
「なぜ」ではなく「いかに」という問題に的(まと)を絞った方が、面白いことが分かったのである。
そのため、この考え方は科学の他の分野にも広まっていった。
つまり、「こうやると、うまくいく」という「HOW」を中心にして、「WHY」を棚上げした方が進歩が早いのである。
人生においても、同様に「WHY」を棚上げにして「HOW」に力点をおくことが大切である。
「人は何故生れてきたのか?」「人生とは何なのか?」「幸福とは何か?」など、解明できないことを考え続けるより、「どこに就職しようか?」「美味しい物が食べたい!」「彼氏・彼女をつくるにはどうしたらよいか?」など楽しくする方法を考えた方が幸せになれるのである。
ちなみに、現在の物理学でも重力が何故働くのかよく分かっていない。