お経は通常、「序文」「本文(正式には正宗分と言う)」「流通分(るつうぶん)」で構成されている。
「序文」は、例えば「如是我聞」(私はお釈迦様から生前、是(こ)のように聞いている)ということわり書きがあり、次に説かれた時と場所を書き、さらに、弟子の誰それや聴衆何百人がいて、釈尊はどんなふうにしておられたかを記してある。
「正宗分」は、説教の内容。
「流通分」は、最後に、この説法を聞いた人々の喜びのありさまと求道の決心などが書かれる。
般若心経は本文だけで、なぜか前後がない。そのため誰がどういう状況で説いたのか分からない。
しかし、漢訳以外に、サンスクリット原典から直接訳したと思われる「チベット訳心経」がある。
それによると、釈尊が座禅をしているそばで、多くの聴衆を前にした観自在菩薩が代表質問者である舎利仏の問いに答えて説いたとなっている。そして、それが終わったころ、釈尊が座禅から立ち上がって、「そのとおりだ、我々人間はそのとおりに、お行なわねばならない。」と証明を与えたことになっている。
よって、「舎利子よ~。」と呼びかけているのは観自在菩薩ということになる。