キーワード:民事訴訟,証拠,録音データ
民事訴訟では,契約書などの書類の他に,写真,動画,録音も証拠になります。
例えば,不貞行為(不倫)の証拠としてホテル出入り時の写真,携帯電話メール・LINEのやりとりの写真が一般的に用いられます。
契約問題の証拠は第1に契約書ですが,解釈・意図を争う際には,会議録(又は録音データ)や電子メールも証拠になります。
写真撮影・録画・録音は相手の同意を得て行われると法的に問題ありません。
無断で秘密裏に撮影・録音・録画すると法律上問題になるか,あるいは民事訴訟で証拠となるのでしょうか?
最近,無断録音した音声データの証拠能力を否定する裁判がありました(東京高等裁判所平成28年5月19日判決)。
会議で自身の名誉を棄損する発言があったと訴えた人が,会議内容を無断で録音したデータを証拠として提出したようです(本人は会議に出席していなかった)。
実は,民事訴訟法には無断で撮影・録音・録画された証拠の証拠能力に関する規定がありません。
証拠能力の判断は個別事案ごとに判断されるのです。(曖昧な回答で恐縮なのですが判例上そうなっているので仕方ありません。)
リーディングケースとなる約40年前の裁判例(東京高裁昭和52年7月15日判決)は,「話者の同意なくしてなされた録音テープは,通常話者の一般的人格権の侵害となり得ることは明らかであるから,その証拠能力の適否の判定に当たっては,その録音の手段方法が著しく反社会的と認められるか否かを基準とすべき」と判示しています。
「テープ」という表現に時代を感じますね。
要するに,プライバシー侵害(例えば,自宅で盗撮・盗聴された写真・動画・音声。盗まれた手紙。)や名誉棄損に該当する場合や,身体的・精神的自由の侵害(閉じ込められた空間で無理矢理言わせた内容を録音・録画したもの)に該当する場合,程度によっては証拠能力が認められないのです。
証拠能力が否定されるケースでは,証拠取得方法が住居・建造物侵入,窃盗,逮捕監禁,強要といった刑法上の犯罪行為を伴う危険性も高いと思います。
また,仮に証拠能力が認められても証拠価値が低く評価されることがあります(前述の昭和52年判決は,証拠能力を認めましたが証拠価値は低いと判断しました。)
したがいまして,証拠収集のために無断で撮影・録音・録画する際には,犯罪行為にならないように注意することはもちろんのこと,やりすぎないように程々にしてくださいね。
なお報道によると,5月19日判決も個別事案の判断として証拠能力を否定したようです。
現時点で詳細な事実・背景事情はわかりません。いずれ判例集に掲載された際には読んでみたいと思います。