うっかりしていた。ふと見たテレビショッピングで健康食品、いわゆるトクホ、の商品が’消費者庁認定’になっていたので驚いた。2009年に消費者庁が出来たときに所管が厚労省から移管されていたのだった。



しかし、これを見て違和感を覚えざるを得なかった。そして、この違和感は、最近問題となった’福島産牛肉の放射能汚染’問題にも共通するように思われる。



本来的には、こうした規制行政、許認可行政(行政は殆どこれだが)については、所管官庁は:


- 規制緩和や許認可を求める業者(主として生産者)



- 消費者


の中間に立って、利害調整を行い、あるべき規制態様を構築し、その維持管理、主には業者監督を行うことが求められる。


その意味では、本来的には(またこの表現を繰り返さざるを得ないが)、消費者庁なぞ無くとも、所管官庁が消費者利益を尊重すればいいだけのことだ。


しかし、現実的には政治的な力を有する生産者側の方が立場的に強くなり、官庁は往々にして業者側を主に見た仕事をしがちである。農水省は生産者農家や団体(要はJA、とか農協、ね)に、厚労省は製薬会社などに、主におもねって仕事をしがちなのである。



このため歴史的に消費者利益が軽視されてきたことの反省の上に立って、こうした業者側官庁とは別個に消費者庁が設立されたはずだった。



ところが、である。



トクホの法律(健康増進法、という、極めて曖昧な、疑念の多い法律だ)の所管が厚労省から消費者庁に移管され、消費者庁は業者に対してトクホの認定を与える許認可官庁となっている。



これでは業者と消費者の間に入った厚労省が上手く機能しなかった構造と何も変わっていない。



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名前が変われども体質的に変わっていない消費者庁、というシロモノは、したがって、今回の牛肉問題でも何ら機能しない。消費者の安全の立場から規制や検査体制の在り方を農水省(生産者)側に突きつける、というのが見られないのだ。



言ってみれば、’利益相反’の問題とも言える。不動産業界でもしばしば問題になるが、利害が相反する双方の立場を同時に代表する、ということは極めて難しい(宅建業者は非常に稀な双方代理が出来る業者である)。こうした観点に立って、ある意味開き直って既存官庁は生産者側・業者視点から、消費者視点は新規の消費者庁から、という政府内部で二元構造を作っておけば良かったはずなのだが、残念なことに産み落とされた時点から消費者庁は重大な欠陥を持ってしまった。



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テレビショッピング見てても、色々考えることは多い。。。