2016年3月31日に「iPhone SE」が発売されてから1カ月が過ぎました。日本ではいまだに在庫切れの状態が続いており、「予約したのにまだ手元に届いていない」という声も耳にします。そんな状況もあり、iPhone SEにすべきか、すぐに入手できる他のモデルにするか、迷っている人もいるかもしれません。

【セルフィーの画質をiPhone SEと6sで比較】

 そこで普段は4.7型の「iPhone 6s」を愛用する筆者が、4型のiPhone SEを1カ月使ったうえで実感したメリットとデメリットを紹介します。スマートフォンのデザインやサイズについては、人によって好みが分かれるところですが、20代後半の女性ライター視点ではこんな印象を受けました。



●ローズゴールドは実物を見て判断したい



 女性にとって最初に気になるポイントは、やはりデザインとカラーリングです。



 今回iPhone 6sに引き続き、iPhone SEでも「ローズゴールド」モデルが登場しました。同時に発表された9.7型iPad Proや、その後発売された12型MacBookにも同じ色が追加され、ゴールドに続く人気カラーとして定着しそうです。これからはiPhone、iPad Pro、MacBook、Apple Watchでローズゴールドのトータルコーデができます。やったね!



 iPhone SEは人気モデルだった「iPhone 5s」のボディーデザインを受け継ぎながら、iPhone 6s以降で好評な新しいローズゴールドのカラーを組み合わせていて、実物を見ても「やっぱり予想通りかわいいわー」と迷わず手にできる安心感があります。



 しかし決してマイナスにはならないものの、実はiPhone SEのローズゴールド、Appleが展開する製品の中で最も「写真と実物の印象が違う色」でもあります。公式サイトや各所レビューの写真を見ると、実物よりピンク成分が濃く写っている印象です。



 実際は持つ手の角度によって落ち着いたゴールドに見えたり、表面に吹きつけられたビーズがキラキラとグレーっぽく反射したりしますし、環境光によっても見え方が異なります。つまりローズゴールド本来の色と、人間の目で認識したときの印象が大きく変わるのです。



 写真と実物の印象が違うということは、製品写真だけで判断するのは危ないということ。写真の色味だけで「ピンクは似合わないキャラだから」と頭をよぎった人こそ、その先入観を捨てて実物を見ると、意外としっくりくる色という可能性もあります。



 なお、先日MacBookのローズゴールドを手にする機会があったのですが、iPhone SE以上に写真と実物の印象が違う色でびっくりしました。これはローズゴールドで彩られた面積がiPhone SEやiPad Proよりかなり広いことも影響しているようです。



 MacBookにしろiPhone SEにしろ、店舗で色味を確認するときは光の当たる角度を変えてみたり、可能であれば店内を動いてさまざまな光の下で見え方を比べてみたりした方がよさそうです。



●片手操作を重視するならiPhone SEがベストチョイス



 iPhone SEの4型というコンパクトなサイズは電車での移動時に活躍しました。「右手だけで画面を操作できるってこんなに快適だったっけ!」と感動したものです。特にソフトキーボードを両手打ちしなくていいのは楽チンです。



 ただ始めこそ頻繁に使っていたものの、しばらくたつとiPhone SEでブラウジングする機会は徐々に減っていきました。普段は4.7型のiPhone 6sを使っていたため、4型ディスプレイに表示される情報量がとても少なく感じてしまったのです。



 どうやら私ももれなく「大画面に慣れると元の小さな画面には戻れない病」を発症した模様。今ではiPhone 6sでこれまで通りブラウジングしていますが、文字入力はiPhone SEの方が快適なだけに痛しかゆしです。私にもっと友達がたくさんいて、メッセージをやりとりする機会が多かったら、iPhone SEに乗り換えていたのかもしれません。



 いわゆるリア充もしくは仕事で頻繁にメッセージのやりとりをする、大画面が操作しづらくて耐えられない、メモ魔といった人は、iPhone SEのメリットを最大限生かすことができるでしょう。



 一方、既に4型以上のスマホを使っていてサイズに不満はない、もしくは文字入力よりコンテンツ体験(SNS、動画、ゲームなど)を重視するユーザーであれば、iPhone 6sか6s Plusの方が幸せになれます。



●加工前提のセルフィーでもインカメラのスペックは重要?



 iPhone SEで注意したいのは、背面側と前面側で異なるカメラ性能です。



 背面のiSightカメラは1200万画素で、iPhone 6sとほぼ同等の性能を確保しました。4Kビデオ(3840×2160ピクセル、30fps)、動く写真の「Live Photos」、720pで240fpsの滑らかなスローモーションなど、動画撮影の機能も充実しています。



 iPhone 6sに比べて本体の側面がスクエア型で適度な厚みがあるので、構えるときにしっかりホールドしやすいのは、カメラ利用時におけるiPhone SEのメリットです。



 一方、前面のFaceTime HDカメラは基本的にiPhone 5sと同じ性能で、画質も120万画素のままです。残念がる声もありますが、インカメラでは必ず画像加工アプリを使う自分にとっては、どちらにしろ“盛る”過程で画質が劣化するのであまり気になりません。



 しかし、念のためインカメラの性能がどこまで盛ることに影響するか、iPhone SEでもちゃんと盛れるのか、3つの定番アプリでiPhone 6sと撮り比べてみました。



 まずは「カメラ360」から。拡大するとさすがにiPhone SEの方が解像度が低いことが分かりますが、SNSでシェアするぶんにはまったく気になりません。アップする際にどのみち圧縮されますし、あまり神経質にならなくてもいいかなと感じました。



 ここで、オシャレなフィルタがモデルやインスタグラマーに人気のカメラアプリ「VSCO」を組み合わせてみました。すると、もはやiPhone SEとiPhone 6sのどちらで撮影した写真なのかは分からなくなってきます。



 次にプリクラ並みに盛れると評判のアプリ「Beauty Plus」です。顔をくしゃっとさせてもシワが最低限に抑えられ、さすがの修正効果ですが、iPhone SEは自動補正がのっぺりと不自然に見える気もします。しかしわずかな違いですし、十分SNSに耐えうる仕事はしてくれます。



 ちなみに、カメラ360とBeauty Plusを何度か暖色系のライトの下で試したところ、ここで掲載しているサンプルのようにiPhone SEはより色白っぽく、iPhone 6sはオークルに近い自然な肌色に加工される傾向がありました。被写体の肌の色やシャッターのタイミングによって左右されるので、あくまで参考程度ですが。



 最後は女子中学生や女子高生を中心に人気のアプリ「B612」です。無音モードだと画質が一気に落ちるので個人的にはあまり使いませんが、パッと見た印象では最もiPhone 6sに近い仕上がりになりました。



 最後に「盛りは邪道」という人のために、純粋なiPhoneのインカメラ性能を見比べておきましょう。iPhone SEではiPhone 6sにも搭載された「Retina Flash」が採用されました。ディスプレイを通常より3倍明るいフラッシュで発光させ、暗所でも美しくセルフィーできる機能です。ただ光らせるだけでなく、「True Tone」フラッシュによって自然な肌のトーンを再現します。



 Retina Flashならフラッシュ撮影時特有の不健康な写りを防ぐので、夜のおでかけの思い出を楽しい表情とともに美しく残すことができます。



 なお、この1カ月でRetina Flashを使ったのは、記事の比較用に撮影した1回のみでした。「盛りたいときにフラッシュは使わない」がセルフィーのオキテなので、光のある場所を求めて移動するか、露出を上げてボヤっと写すようにして盛ります。



●ハイエンドスマホ好きではなく、より幅広い層を満足させるiPhone SE



 もちろんiPhone SEは、スマホとしての基本性能が高いことも魅力です。最新のApple A9チップ搭載で動きがサクサク、バッテリーの持ちがiPhone 6sに比べると連続通信時間で最大3時間アップなど、iPhone 5s以前のユーザーならすぐに違いを感じられるポイントが多数あります。



 また、スペシャルイベント発表後の速報で「Touch IDが第1世代なのは非常に残念」と感じた私ですが、A9チップの効果か、実際はiPhone 6sに近い指紋認証の反応速度で、iPhone 6よりは確実にレスポンスが速くなっていたのはうれしい誤算でした。



 そしてiPhone SE発売の3週間後、アップルジャパンはSIMロックフリー版の5000円の値下げを実施。16GBモデルは4万7800円、64GBモデルは5万9800円(どちらも税別)で購入できるようになりました。在庫切れで手に入りにくい状態が続いていますが、Apple Storeで予約さえすれば、確実に購入することは可能です。



 私はすっかりiPhone 6sの高性能と大画面に慣れきってしまったため、1カ月間使ってみてもiPhone SEがメインスマホの座を奪うことはありませんでした。しかし、それは好みや利用スタイルの問題であって、iPhone SE自体は見た目も中身もiPhoneブランドらしい、非常に完成度の高い製品だと感じています。



 手の小さい女性だけでなく、iPhoneが高すぎて今まで敬遠してきた人、スマホデビューする子ども、大画面に慣れない乗り換え組、iPhone 5s以前のユーザーと、幅広い層にとって満足できるモデルであることは間違いありません。



[らいら,ITmedia]