女子高生、伊吹ケイコは決意した。









「あたし、アイドルになる・・・!」







伊吹ケイコは都内の私立の女子高に通う、女子高生だ。

歳は17。

6月3日生まれのかに座のAB型。

好きな食べ物はモンブラン。

家は六本木の住宅街の中にある。

父親は外資系の商社に勤めており、

母親は典型的な箱入り娘で家事は上手とはいえないが、家にいていわゆる主婦をやっている。

どちらかといえば、というか、かなり裕福な家の育ちで

伊吹ケイコ自体、何ひとつ不自由なく育った。


小さい頃から欲しいものはすぐ買ってもらえたし

一流の家庭教師がついていたせいか、成績もよかった。

運動はズバ抜けてはいないが人並みの能力はあるし

何より、容姿がよかった。





「うん、あたしってば結構イケてる。」






伊吹ケイコは満たされたかった。




何ひとつ不自由ない暮らし。

制服がかわいいというだけで入った、おしとやかなお嬢様が集う女子高。

平凡な毎日。

同じことの繰り返しの毎日。


そんな毎日に、なにかしら刺激が欲しかった。






「そうだ、カワイイんだから、アイドルになればいいんだわ!」






お嬢様はそう思いついた。


「なんだ、簡単なことだったのね」

伊吹ケイコは軽くスキップをして家路を急いだ。





家に帰ると、丁度お隣に住むケンジが出てきたところだった。





「おい、ブス、何つったんてんだよ。」


いきなりのケンジのののしりに、伊吹ケイコは反撃する。


「何よ、このチビ!あたしはブスじゃないですよーだ!」


お決まりの喧嘩文句。これはこの17年間変わっていない。

伊吹ケイコと、お隣に住む板谷ケンジは幼馴染。

両親同士が同級生だったということもあって

昔から何かと顔を合わす間柄であった。



「おぉ、こわ。そんなんだから彼氏の一人もできねーんだよ」


ケンジがイタイところをつく。

伊吹ケイコには彼氏がいない。

女子高にずっといたせいもあって、なかなかいい人と知り合うタイミングもなく

ずるずるとここまできてしまった。



「な・・・なによ!いないんじゃないわよ!作らないだけよ・・・!」


言い返す。

惨めになる。



「あー、そうですかぁ。まぁなんだっていいけど・・・。」


ケンジの態度にむっとする。

あたしはカワイイんだから・・・あたしはカワイイんだから・・・







「あたし・・・、アイドルになるんだから・・・!!!」

















ぽかんとするケンジを横目に見ながら

伊吹ケイコはそそくさとドアを開け、中に入った。



「ケンジのバカ・・・!」









家に帰ると、さっそくパソコンをつけ、オーディション関連のニュースをチェックする。


美少女コンテスト・・・資格、13~15歳・・・て無理だな・・てかロリコンかよ・・・!

映画出演オーディション・・・演技は・・・あんまり得意じゃないわね・・・

声優オーディション・・・声優て顔でないからダメじゃん・・・!!



ぶつぶつとつぶやきながら調べる。

そのとき、ひとつのオーディションが目にとまった。


「STUDIO・K、未来のアイドル発掘オーディション・・・かぁ。」


詳細を調べる。

「香坂かれんがいるのかぁ・・・あぁあの人好きだなぁ・・あんまりパッとしないけど。でもいいかも。」






■応募資格■


・年齢:15~22歳まで

・自分を信じている人

・未来を信じている人





未来と自分を信じるかぁ・・・





伊吹ケイコは、いつのまにか、応募ボタンを押していた。




プロデューサー、池上浩二はとまどっていた。








池上浩二は都内にある中小の芸能プロダクションに勤務する。

元々学生の頃に街頭でスカウトされたのがきっかけでこの業界へと足を踏み入れた。

初めの頃は雑誌のモデルとして、

ちょこちょことドラマのちょい役として活躍もしたが

3年目にしてプロデューサーへと転向した。


タレントとしてやっていくには武器がなかった。


顔は整ってはいるが、大しておもしろいことも言えず

良く言えば無難、

悪く言えば平凡であった。

ただ、彼には新しいこと、おもしろいことを考える企画力があり、

流行に対していつもアンテナをはりめぐらすという探究心があった。

プロデューサーはまさに彼の天職であった。



渋谷の一角にあるオフィスからは、あわただしく動きまわる街の様子が見える。



彼の所属するプロダクションは「STUDIO・K」という。

浩二のKと、立ち上げメンバーで現社長の岩坂勝也のKをとって、スタジオKにした。

単純ではあるが、気にはいっている。

昔からKというアルファベットの響きが好きであり、

名前を書くときは、いつも「K.I」とイニシャルで書いた。


STUDIO・Kは、主にグラビア系のアイドルが多数在籍しており、

中には正統派アイドルから、バラエティアイドルまで幅広い。

しかし、これといって大ブレイクしたタレントがおらず、

一番の売れっこといえば、この間、木曜10時から放映されていた「天使の休日」の

主人公の妹の友達のメイコ役であった、香坂かれん、あたりである。

このままではいけないと思った浩二は、新人発掘に努めるが

なかなかコレ!といった子にめぐり合えない。


芸能プロダクションで大切なことは、金の卵を確保すること。


現在、有力なタレントをかかえていない、STUDIO・Kは

これからのことを不安に思っていた。







「オーディションすればいいんだよ。」





勝也が軽く一言発する。



「携帯やWebで宣伝してさ。新人発掘なんとかってうたってさ。未来のスターは君だって。」


なるほど。







「俺たちも本気だ!ってことをPRしてさ。審査料とらないで。それから、グランプリには今後の全面的バックアップを

約束します~ってさ。」





確かにオーディションなら集まるうちから吟味できるもので

スカウトに街にくりだしたり、

歩き回ったりする時間がはぶけるってものだ。


いい子がくるのか


それともハズレばかりか






まぁそんなことは今はおいといて・・・

さっそくオーディションの広告を出すことにした。

まず、自社HP。

あとは仲良くさせてもらってる雑誌の方と、

今回は奮発してポスターも作ろうか。










池上浩二はわくわくしていた。

<<2007年10月22日 帝都新聞>>

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東京都内で変死体。度重なる連続殺人。犯人は逃走中か?!


昨夜、東京都内、○○町1丁目のゴミ捨て場に謎の変死体が放置されているところを

近くを通りかかった公務員の男性が発見し、110番通報した。

遺体は東京都に住む川瀬友香さん(21)と判明。

遺体は両目をえぐり取られており、それ以外は目立った外傷はなかった。

死因は絞殺からの窒息死だと推定されるが、体内から微量の睡眠薬が発見されており、

犯人が被害者をいったん眠らせ、それから絞殺し、目をえぐり取ったものと思われる。


犯人は連続殺人犯か?!


このような事件は今月に入って3件目。犯人は計画的に連続殺人を繰り返しているようであり、

警察も近隣住民に警戒態勢を呼びかけている。

  ・・・

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