色鮮やかに躍動していた世界が突如として暗転し、生きる望みを失った13歳の冬、ヨウは野球部の練習に参加していた。 

ヨウは野球部でも干され始め、行き場のない毎日を淡々とこなすことで精いっぱいだった。 

「ショーイ」「ショーイ」ヨウの弱弱しく、このチーム独特なシュールな掛け声が哀愁を漂わせていた。 

これでも小学生の時は母親が未来のイチローになるんじゃないかと期待するほど、良く打ち、守り、走った。 

中学では声が小さい、フォームが悪い、それだけで試合にも出してもらえず冷遇された。 

結局練習試合も含め、試合で打ったヒットは3年間で1本だけ。 

勉強だって成績は下がる一方。 

何もかもこんなはずじゃなかった。 

その頃のキーワードは「転落人生」「いつ死んでもいい」 

うすうす感ずいてはいたが、ヨウは出口のないブラックホールに吸い込まれ、ガタガタ音を立てて回りながら奥へと押し込まれる、拷問に似た状況にいた。

その頃の癒しは曲を聴くことで、シルバーのカセットウォークマンが一番の相棒だった。 

中学で初めて買ったCDはGLAYの「winter again」そんな世代。 

歌詞に興味は無くて、自分の人生の各シーンに使える、心地良いBGM探しでもしていたのだろう。 

とにかくヨウは口数が少ない。学校が終わると家族の前でも無言で、心の119番とばかりに音楽を流し聴き、嫌々予備校へと行く鬱々とした毎日であった。