「【ハラリ×宇多田】「人間より創造的なAI」と、どう生きるか」がちょっと面白い。
「AIが急速に進化している今、「創造性」という人間にとって最後のとりでにも、AIの侵食が始まっている。
そんな中、世界的ベストセラー『サピエンス全史』『NEXUS 情報の人類史』(いずれも河出書房新社より邦訳刊行)の著者として知られる歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリと、日本を代表するアーティストの宇多田ヒカルが、ロンドンのフロイト博物館で特別対談。
かねてAIの発展によるディストピアを危惧してきたハラリ氏と、AIと人間の協働に希望を抱く宇多田氏。それぞれが思い描く「AIとの共生」とは?
AI時代における音楽と創造性の行く末、そして人間の本質に迫った刺激的な対話を、動画版と併せてたっぷりお楽しみいただきたい。(前後編の前編)」
「ハラリ
音楽については、ぜひ専門家であるあなたの意見を伺いたいのですが、少なくとも囲碁やチェスのようなゲームでは、いまやAIのほうが人間よりもずっと創造的です。
あまりに創造的すぎるプレイは「AIの助けを得ているに違いない」と思われるほどです。
私自身が本を書くプロセスを振り返ってみても、まずは自分が本当に気になっている「問い」を見つける必要があります。その問いに沿って、資料を集めて、それらを分析し、物語や逸話などを交えながら文章としてまとめていく。」
「宇多田
私にとって音楽を創るのは、頭の中で踊っているような感じなんです。
自然で予測可能なメロディやコード進行のバランスの中に、自分の感覚を乗せていく。そして、少し意外だったり変だったりする「裏切り」のような部分を忍ばせるのが好きなんです。「こんなの起こるはずがない」という感じの展開を。
ハラリ
パターンを壊すということですね。
宇多田
そう。そこが一番楽しい部分です。
このとき私は「自分が面白いと感じること」を基準にしていて、明確な目的があるわけではありません。
私の限られたAIの知識の中で見る限り、創作のプロセスにおける一番大きな違いは、私の音楽制作の目的が完全に「自分本位」だということです。
なぜなら、自分自身や周囲の世界について何かを見つけようとしているだけなので。
たくさんのアイデアが浮かんでは「うーん、ちょっと違うな」と感じて、たまに「あ、いいかも」と思っても、「やっぱり違うかも」ってなったりして。
でも、本当に「これだ」というものが来るときって、心の奥のどこかにあった、ピントの合っていなかったビジョン、つまり自分の中でずっと探していた答えにぴたりと重なるんです。
それって、自分自身についての「何かしらの真実」を発見するようなものなんですよね。」
小松 仁



