スーパー書評「クーンが提示したパラダイムという基礎概念」 『科学革命の構造』(中山茂訳、みすず書房、青木薫訳『科学革命の構造【新版】イアン・ハッキング序説』みすず書房) – WirelessWire News

 

スーパー書評「クーンが提示したパラダイムという基礎概念」 『科学革命の構造』(中山茂訳、みすず書房、青木薫訳『科学革命の構造【新版】イアン・ハッキング序説』みすず書房) – WirelessWire News」がちょっと面白い。

 

「たまには、自身の専門領域から、ただし、かなりポピュラーになった書物を取り上げさせて頂きます。著者はトマス・クーン(Thomas Kuhn、1922~96)、原著は1962年<The Structure of Scientific Revolutions>として刊行されました。中山訳は1971年の刊行です。さらに同じ書肆(しょし)から、ハッキングという人が書いた序説を加えて、新しい訳書が出版されました。原著が刊行されて50周年を記念に、アメリカで新版が刊行されたものの全訳ということになります。」

 

「そうだとすれば、科学の歴史は、連続的な進歩の歴史ではなく、あるパラダイムが強固に支配する時代(通常科学)、それが緩み始め、新しいパラダイムの芽が生まれ始める時代(異常科学)、そして新しく誕生したパラダイムが、古いパラダイムに取って代わる時代(科学革命)、そしてまた新しいパラダイムが安定して支配する時代(通常科学)、こうした時代交代現象の繰り返しこそが、科学の歴史ではないか、というのがその後「クーン主義」と呼ばれるようになった新しい科学史モデルでした。

 この点は、一般の歴史観にも影響を及ぼしました。歴史的過去を評定するのに、現代の我々の立場をそっくり過去にも通用するものとして当て嵌めて、如何に過去が現代に比べて愚かで非合理であったか、とすることの愚かさ、パラダイムの考え方は、そうした我々が陥りがちな歴史観、つまりは進歩史観への、基本的な批判をも生み出したことになります。こうした発想を相対主義的歴史観と呼びます。クーンは、比較的温和な常識人でしたので、個人的に話しても、こうした相対主義的歴史観への全面的な賛意を表しませんでしたが、例えばポール・ファイヤアーベント(Paul Feyerabend、1924~94)のようなラディカルな人は、はっきりと相対主義を表明しています。」

 

 

小松 仁