ローマ教皇死去のウラで…いまドイツで起きている「キリスト教の崩壊」と「西洋の敗北」

 

「ローマ教皇死去のウラで…いまドイツで起きている「キリスト教の崩壊」と「西洋の敗北」」がちょっと面白い。

川口 マーン 惠美(作家) の意見

拓殖大学日本文化研究所客員教授。

 

「エマニュエル・トッドは自著『西洋の敗北』の中で、多くの面白いテーゼを打ち立てているが、そのうちの一つが宗教に関するもの。彼は、西洋の自由民主主義が、現在、破局的な危機にあると見ており、それはキリスト教の崩壊と深く関係している。

 つまり、自由民主主義の退化は、社会の上層部と下層部の対立のせいだけではなく、キリスト教が崩壊していく過程の中で社会が個人単位に解体され、集団的信仰、および集団が持つ力が破壊されたことで引き起こされたという。その結果、キリスト教の代替物として、左翼政治イデオロギーという新しい宗教が現れ、今に至っている。

 トッドの分析によれば、キリスト教の崩壊の過程には3つの段階がある。まず、「活動的段階」では、まだ人々のミサへの参加率は高く、キリスト教は活きている。その次が、次第に人々がミサには行かなくなる「ゾンビ状態」。しかし、多くの人々はまだ、誕生、結婚、死という人生の区切りとしての儀式だけは、キリスト教で執り行う(これでいくと、日本は今、ゾンビ状態?)。」

 

「ところが、第3の「キリスト教ゼロ状態」になると、子供に洗礼も受けさせず、教会が拒否してきた火葬が大規模に行われるようになる。今のドイツはすでにほぼこの段階に差し掛かっているが、面白いのは、トッドが、ある社会がキリスト教ゼロ状態に達した日を、正確に特定できるとしていることだ。それはいつかというと、同性婚が異性婚と同等だと考えられるようになった日なのだそうだ。

 つまり、ゾンビ状態のうちは、婚姻はその義務や生殖との関係において、まだキリスト教の本質的な特徴を保っているが、同性婚が合法化した瞬間、宗教は完全に消滅する。そして、国民国家が解体され、グローバル化が勝利するというのだが、ちなみにドイツではこれが、2017年の6月だった。」

 

「ドイツには現在、2800のモスク、および礼拝所があると推定される。大きな町の中心では、ミサに来る信者がいなくなり、閉鎖される教会も多いため、それをイスラム組織が買って、モスク(回教寺院)に改築したなどという笑い話のような事例さえある。」

 

ローマ教皇死去のウラで…いまドイツで起きている「キリスト教の崩壊」と「西洋の敗北」

 

小松 仁