グーグルへの公取「排除命令」は、日本のデジタル赤字対策になるか?|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
「グーグルへの公取「排除命令」は、日本のデジタル赤字対策になるか?|ニューズウィーク日本版」がちょっと面白い。
「冷泉彰彦
(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。
最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。」
冷泉彰彦のプリンストン通信」
「日本の公正取引委員会は4月15日に、グーグルに対し、スマホに「クローム」などの検索アプリを搭載させ、アイコンを目立つ位置に配置させるなどの行為は、独占禁止法違反にあたるとして「排除措置命令」を行いました。具体的には、公正取引に違反しているので、すみやかに違法行為を止めさせ、市場の競争環境を回復させ、また再発を防止せよというのですが、よく考えてみると妙な話です。」
「グーグルの最大のライバルは、アップルの iPhone ですが、こちらはOSと検索エンジンの提供企業が同一(ハードウェアも同じです)なので、抱き合わせ販売にそもそも競争はありません。ですから、同じ方法でアップルに規制をかけることはできないわけです。」
「著作権法の何が問題かというと、検索サービスに必要な情報の転載や複製は違法とされたからです。問題意識は当時からあり、21世紀になって著作権法は数回の改正がされましたが、現時点でも商用目的の転載や複製は「軽微利用」しか認められていません。ですから、依然として日本語で提供される検索サービスについては、グーグルなど外資による国外のサーバに頼っているのが現状です。
ですから、いくら「公正な競争」を目指して公取が頑張っても、日本の民族資本による検索サービスが復活して、デジタル赤字が縮小するということには「ならない」のです。」
「どうして民族資本のデジタルプラットフォームが成立しないのかというと、まず巨大なサーバなどのインフラを用意する資金力がないからです。また、仮に国内に巨大サーバが増えたとして、電力の供給やコストに制約があります。さらに言えば、少しでもスキがあれば不正アクセスの危険がある中で、最先端のセキュリティ水準を実現するだけの技術力と人材の厚みがありません。ですから、どうしても外資に頼らざるを得ないのです。」
「デジタル赤字の問題は、単に課税や公取の摘発などといった、散発的な対応で改善する問題ではないのです。DXに関わる国を挙げての競争力をどうやって回復するのか、社会の幅広い部分における改革が必要です。少なくとも、大学進学率が50%を超え、中高レベルの数学リテラシーが今でも世界のトップ水準である日本で、デジタル化は外資頼みというのは不自然です。」
小松 仁
