ビル・ゲイツ、自分が“手に負えない子ども”だったころについて語る | WIRED.jp

 

「ビル・ゲイツ、自分が“手に負えない子ども”だったころについて語る」(WIRED.jp)がちょっと面白い。

 

「クラスメートを怯えさせ、留置場で一夜を過ごし、LSDでぶっ飛ぶ──。これはあなたの知るビル・ゲイツではないだろう。このたび回顧録を刊行するゲイツに、ポール・アレンとの思い出からAIについてまでを、『WIRED』のスティーブン・レヴィが訊いた。」

 

「ビル・ゲイツの回顧録にウィリアム・ワーズワースの詩は登場しない。でもその最新刊『Source Code: My Beginnings』(ソースコード:わたしの人生の始まり)を読んで頭に浮かんだのは、1802年にこの詩人が書いた有名な一節「The child is father of the man(子どもは大人の父)」という言葉だ。本書の大半はゲイツの幼少年期に割かれ、マイクロソフト立ち上げの話が出てくるのは最終盤だ(今後刊行される第2部はマイクロソフトの話で、第3部はビル&メリンダ・ゲイツ財団の物語になるという)。」

 

「──ご両親は途方に暮れて、あなたをセラピストのところに連れていったそうですね。本の終わりの方で、もしいまの時代に子どもだったら、自閉症スペクトラム症と診断されていただろうと書いています。どうしてそう思うのですか?

 

当時、ちょっと変わった子どもには何らかの支援が必要だという考え方は一般的ではありませんでした。わたしは明らかに多動気味だったと思います。集中力はありました。クレッシー博士は両親との葛藤を通じて自分が何をしようとしているのか考えるきっかけを与えてくれました。わたしに何か考えがあったのか、それともただ困らせようとしただけなのか? 博士に会えたことはよかったと思っています。もし何かの診断をされていたら、どうなっていたでしょうね。いまの子ども達は大人の目を逃れられません。わたしはコンピューターセンターに逃げ込んだり、ひとりぼっちで過ごしたり、ハイキングに行くことだってできました。」

 

「──ポールはLSDの先輩でもありましたね。スティーブ・ジョブスは以前、LSDは自分を成長させ、心を開いてくれたと語っていました。創造性とデザインの役に立ったと。あなたにとっては、クスリがそんな覚醒を生んだような印象を受けませんでした。

 

スティーブがやった一包はプロダクトデザインとマーケティングにすごい効き目があったのでしょう。あー、その包みがわたしのところに回ってきていたら! そうですね、若い頃はバカなこともやりました。ポールに感謝しないといけません。ただ、仕事に没頭するようになる頃には止めていました。」

 

「──スピード違反で捕まったときのことも少し書いています。留置場で過ごした一夜は不安でしたか?

 

いいえ、笑い話です。こんな若者がいいクルマに乗っていることを警察は不審に思ったようです。こいつは何者だ? ヤクの売人か何かなのか、と。

──20代初めに自分の金でポルシェを買ったのですね。

 

明らかに普通の若者とは違いました。常に手元に十分な現金を置いていたので、ポールが保釈しに来てくれました。」

 

「世界経済は大富豪を生みました。わたしのような。ほかにも、おそらく50、60人くらい。イーロン・マスクを筆頭に、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグ、スティーブ・バルマー、ウォレン・バフェット、マイケル・ブルームバーグら、とてつもない富をもつ人々がいます。それはそれで問題ない。ただ、もっと課税は累進的であっていい。わたしの手もとに残るのが3分の1程度になるくらい。それでも巨万の富です。」

 

「──人工知能(AI)の話をしましょう。何年も取り組んできたのに、最近の生成AIの革新的ブレークスルーに即座に飛びつきませんでした。OpenAIがあなたの家でGPT-4のデモンストレーションをして、上級レベル生物学のテストで高スコアを出すまで、乗り気ではありませんでしたよね。当初の疑念の理由は何だったのですか?

 

コンピューターとの付き合いを通して、AIは常にわたしの頭のなかにありました。いまとなっては的外れですが、マイクロソフトを立ち上げるためにハーバードを後にしたとき、後悔するかもしれないと思ったことのひとつは、わたしがBASICインタプリタを開発している間に大学におけるAI研究がすごい速度で進むかもしれないということでした。杞憂でしたけどね。豊かな方法で知識をコード変換することができて、生物学の教科書を読み込んで上級レベル試験に受かるようなことができるなら、わたしたち自身が知識をどのようにコード変換しているのか明確に理解できると思っていたのです。実際にはそうではなくて、わたしたちが発見したのは、理解できない妙な統計的アルゴリズムでした。どうしてGPTはうまくいくのか? さっぱりわかりません。でも、OpenAIにGPT-4を見せられたとき、極めて重要な一線を超えたことに衝撃を受けました。まだ信頼性の問題は残っていますが、すべて解決できる道筋は見えています。」

 

「──OpenAIのCEOであるサム・アルトマンは、数年のうちに人間のように汎用人工知能(AGI)が実現すると言っています。同じ意見ですか?

 

完全に。

 

──わたしたちにとって、それは何を意味しますか?

 

AGIを電気やトラクター、マイクロコンピューターなどと同じように考える人にはわかりません。AGIは人の生産性を上げる補助ではない。人間の能力を超えるものなのです。限界はありません。そして、とても、とても速く進行しています。過去の技術革新を振り返って「OK、すべてうまくできた」というような考えは、AIには当てはまらないのです。」

 

Photograph: Sinna Nasseri

 

小松 仁