RIETI - 米中ハイテク摩擦と日本の対応:日米中のイノベーションプロセス比較から得られるインプリケーション
「RIETI - 米中ハイテク摩擦と日本の対応:日米中のイノベーションプロセス比較から得られるインプリケーション(元橋 一之ファカルティフェロー)」がちょっと面白い。
「我々が行ったイノベーションプロセスの国際比較の結果は、米国においては主に新興企業が担うサイエンスイノベーションが活発に行われており、日本がそれに次ぎ、中国は日米と比較して新興企業におけるオリジナリティーの高いイノベーションにおいて後れをとっていることを示唆している。また、米国は科学論文などで見る研究力(図3の科学フロンティア拡大能力)において他国を圧倒しており、中国とのデカップリングはそのキャッチアップを阻止しようという動きと見ることができる。ただ、中国もその研究力を急激に伸ばしてきており、AIをはじめとしたコンピュータサイエンス分野においては米国と肩を並べるか、分野によっては凌駕する状況にある。」
「その一方で日本は、量、質とも科学論文において米中と比べて大きく水をあけられているのが現状である(元橋、2022)。従って、日本においては先端的な科学研究については国際的な最先端の研究成果を取り入れて、世界初の研究成果を目指していく必要があると考える。情報をクローズにすることは、たとえそれができたとしても、逆に世界の研究潮流から遮断され、一国としての相対的な科学技術力の低下を招く可能性が高く、世界から一流の研究者を集めるということも困難になる。従って、日本においてアカデミックな研究活動に対して安全保障の観点から介入を行うことは、図3のプロセス全体を停滞させる可能性が高く、避けるべきであると考える。」
「一方で、軍事転用の可能性など安全保障の観点から問題となる技術の特定は、サイエンスイノベーションが実現した段階において可能と考える。まず、サイエンスイノベーションとして結実した時点での対策としては、その成果物としての大学知財や大学発ベンチャーの技術が、安全保障上重要と考えられる場合、投資規制等によって国外に流出しないようにする措置が考えられる。また、ビジネスイノベーションの段階では、エコシステムのフォーメーションにおいて日本企業を中心的存在(キーストーン)とするための政策的支援を行うことである。いずれにしても基礎研究における対策や貿易管理規制をバラバラにとらえるのではなく、イノベーションプロセス全体の中で統合的に検討する必要がある。」
小松 仁
