MIT Tech Review: 荒野を開拓する科学者たち——人類移住のカギを握る「火星農業」研究の現在
「荒野を開拓する科学者たち——人類移住のカギを握る「火星農業」研究の現在」MIT Tech Review:がちょっと面白い。
デビット・W・ブラウン [David W. Brown]
米国版 寄稿者
米国ニューオーリンズを拠点に活動する作家。次回作『The Outside Cats』は、極地探検家チームと、そのチームに同行して南極まで行った自らの探検旅行に関する話である。2026年にマリナー・ブックスから刊行予定。
「火星に人類は移住できるのか。その実現性を左右する最大の課題は、食料をどう確保するかだ。有毒物質に満ちた赤い砂の大地で作物を育てようと、科学者たちは地球上の小さな実験室で新たな試みを続けている。」
「かつて、火星の表面には水が流れていた。海岸線には波が打ち寄せ、強風が吹き荒れ、どんよりとした曇り空からは激しい雨が降っていた。40億年前の火星は地球とさほど変わらなかった。ただし、1つ重要な点で異なっていた。大きさである。火星の直径は地球の約半分であり、それが問題だった。
火星のコアは急速に冷え、やがてこの惑星は磁場を失った。その結果、太陽風に対して脆弱になった火星は、大気の大部分を吹き飛ばされてしまった。太陽の紫外線を防ぐ大事な盾がなくなり、火星は熱の保持ができなくなった。海の一部は蒸発し、残りは地下に吸収され、残った水は極点のわずかな氷だけになった。惑星全体を覆う砂嵐からの静電気放電と、容赦なく降り注ぐ放射線は、乾燥した火星の土壌の中で化学反応を引き起こし、最終的に過塩素酸塩と呼ばれる厄介な有毒塩類だらけにした。かつて火星に草が生えていたとしても、そのような時代は終わったのだ。」
「NASAにとって、過塩素酸塩は非常に深刻な問題である。NASAのアルテミス(Artemis)計画の最終目標は、火星に宇宙飛行士を着陸させることだ。そして過去10年にわたり、NASAは火星で「地球に依存しない」人類の恒久的な居住を目指す長期計画を追求してきた。信憑性は薄いもののより野心的な計画として、スペースX(SpaceX)の最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスクは、今後20年の間に100万人の人々が火星で暮らすようになると予想していると明言してきた。」
「ロウレイロ准教授によれば、唯一の実現可能な解決策は、火星の大地を耕作することだという。「過塩素酸塩の問題は、必ず対処しなければならない問題です」。
火星には土がない。埃っぽく有毒なレゴリス(惑星表面を構成するもろい岩、砂、塵の混合物)があるだけだ。地球上のレゴリスには、何十億年分もの分解された有機バイオマス、つまり土壌が豊富に含まれているが、火星にはない。火星では、ただ単に地面に種を撒き、水を与えるだけでは、食料になるものを育てられないのだ。生命を支えることができる土壌の層を作り出す必要がある。そのためにはまず、有毒な過塩素酸塩を取り除かなければならない。」
「「火星まで6カ月から9カ月かかります。食料源を失えば、補給を待つ間、生き残れないかもしれません」とパーマー准教授は言う。解決策は多様だ。冷凍食料を備蓄するべきだし、一部の食料は水耕栽培で育てるべきだ。また、レゴリスで栽培されるものもあるに違いない。1つのシステムが失敗しても、他のシステムが再スタートを助けてくれる。これは単なる安全対策の基本だと、同准教授は言う。しかし、それだけではなく、火星で生活することを本気で考えるのであれば、私たちを特別な存在にしている技術を使う必要がある。農業は間違いなく、そのような技術の中でも最優先事項である。」
Meredith Miotke | Photo: NASA/JPL-CALTECH/MSSS
小松 仁
