「RIETI - 能力と功績のどれくらいが運によるものか?」がちょっと面白い。
小泉 秀人(RIETI研究員(政策エコノミスト))
イェール大学国際開発経済学修士号取得後、Innovation for Poverty Actionと世界銀行で途上国における社会実験プログラムの分析に従事。2020年ペンシルベニア大学ウォートン校応用経済学博士課程修了。同博士号(Ph.D. in applied economics)取得。一橋大学イノベーション研究センターで特任講師。2023年より現職。
「人生は運で左右されることが多く、「親ガチャ」のような先天的な運もあれば、日々の中で偶然起こる後天的な運もある。世界では近年、ポピュリズムが急速に拡大しており、その背景には経済競争で敗れた人たちに対する実力主義の観点からの冷遇が、怒りや不安の増幅につながっていることがあると考えられる。しかし、もしも初期の小さな「運」が後々に大きな差を生むのであれば、実力主義の正当性は崩れる。RIETIの小泉秀人研究員は実力勝負の世界であるボートレースを題材に、成績が初期の運にどれぐらい左右されるのかを分析。初期の運が後の結果に大きな影響を与えることを示した。本インタビューでは、分析結果から得られる政策的含意について話を聞いた。」
「ボートレースという枠組みを使って、運がわれわれの能力や功績や実力をどれぐらい構成しているのかを明らかにしました。ボートレースでは同じ製造元・モデルのエンジンが使われるのですが、どうしても個体差が出てしまいます。良いエンジンと悪いエンジンを恣意的に割り振ると不公平なので、公平性を期すために「ガラポン」のようなくじ引きで各選手に割り当てるという特殊なシステムがあるのです。今回の研究ではこの枠組みを使って、運良く良いエンジンに当たったレーサーとそうでないレーサーの2グループに分けて追跡したのですが、初期の一度の幸運が後々大きな違いを生むことが分かりました。」
「私が考えているのは、正のフィードバックループ、俗にいうバタフライ効果です。何か成功体験があったとして、それは幸運な出来事がきっかけだったとします。成功体験が得られれば自信がつくし、実社会でより多くの機会を得られると思うのです。良い上司に巡り会えたら、仕事をがんばって、成果が出て、さらに良いプロジェクトを任されるようになるでしょう。ボートレースにおいても、勝っていけばより多くの、より高いグレードのレースに出ることができます。そうした自信や機会が成功体験を生み、さらに機会と自信につながるというループが生まれ、後に大きな差を生むと考えられます。」
「企業の前例主義はどれぐらい強いのかを見ているのですが、取りあえず今見えているのは、バブル崩壊時に赤字転落した企業はその後ずっとコストカットしているということです。ずっと切り売りしていて、利益だけは伸びているのですが、売り上げは落ちているし、コストも減らしています。なぜ企業が政策を変えないかというと、前例主義があるからということが見えているので、今は有価証券報告書のテキスト分析で経営陣の心理状態を測るような研究をしています。」
小松 仁
