MIT Tech Review: 谷口忠大教授が考える、「システム3」時代のAI研究の未来像 (technologyreview.jp)

 

MIT Tech Review: 谷口忠大教授が考える、「システム3」時代のAI研究の未来像」がちょっと面白い。

 

「AI・ロボティクスの研究開発が加速度的に進んでいる。記号創発ロボティクスの研究に長年取り組んできた谷口忠大・京都大学情報学研究科教授はこの現状をどのように見ているのか。話を聞いた。」

 

「本年度の審査員の1人である谷口忠大氏は、京都大学大学院情報学研究科教授を務める一方、パナソニックのシニアテクニカルアドバイザーも務めている。アカデミック、民間企業の双方向から、AI・ロボット研究、新規事業の技術戦略の策定に携わっている谷口氏に、研究の現状や課題、イノベーターの条件についてインタビューした。」

 

「言語(より一般的には記号システム)は個人の視点からは発達的に学習されるものである一方で、それ自体が進化的に形成されるものでもあります。このようにボトムアップに言語や記号が立ち現れる様を広く言語(記号)創発と呼んでいます。人工知能(AI)における言語学習や表現学習における議論は個体のエージェントによる学習の議論に終始しがちです。しかし、言語とは外在する言語資源を一体のエージェントがただ内化し保持するだけのものではありません。言語とは社会の中で分散的に保持されて、また常にその使用を通して変容していくものです。その言語を使用し他者とコミュニケーションし、その言語からのトップダウンな影響を受けながら私たちは世界を認識しています。記号創発システムはそのような記号システムそのものが個人の環境適応を起点としながら、社会の中で創発し、機能する様を表した図式的なモデルです(参照:谷口忠大「集合的予測符号化に基づく言語と認知のダイナミクス:記号創発ロボティクスの新展開に向けて」認知科学第31巻第1号,2024.pp.186–204)。」

 

「(テスラが二足歩行ロボットを開発に取り組んだり、グーグル・ディープマインドがRobotic Transformer 2(RT-2)を発表したり、ロボティクスの研究開発が進んでいます。海外のAI企業の動向についてはどのように見ていますか?)

 

 加速度的に進展していますよね。いろいろな分野が資本主義経済下では「産業とつながったら、資本投下で一気に加速するよ」と言われていますが、それを今、肌身で感じていています。特に米国西海岸の大学の周りにさまざまなステークホルダーが集い、資本と人材を回しながら、事業化を進めるようなエコシステムがあり、これが本質的な役割を担っているように思います。東京大学の松尾豊先生などは明確にエコシステムを生み出す意思を持って十年来されていますが、例えば京都をはじめとした関西圏においても個々の研究のみならずエコシステムの形成に目を向けて努力していく必要があると考えています。」

 

谷口忠大氏/提供写真

 

小松 仁