Modern Times | 「なぜコオロギばかり?」。味も能力も高い、バッタならば住民を救えるのに
「Modern Times | 「なぜコオロギばかり?」。味も能力も高い、バッタならば住民を救えるのに」がちょっと面白い。
佐伯 真二郎(さえき・しんじろう)
技術顧問として2019年からTAKEO株式会社に参画し、2024年からCSOとして所属。2023年までJICA草の根技術協力事業「ラオス農村部住民の食糧事情向上を目指した昆虫養殖技術開発事業」プロジェクトマネージャーとしてラオス在住。2013年から「蟲ソムリエ」プロジェクトとしてこれまで471種の昆虫を味見、記録。2015年神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学。国際商流の開拓、学際連携のマッチングを進め、昆虫食業界が社会を挑発し、そして調和する長期のビジョンを提案する。
「「なぜコオロギばかり?」。味も能力も高い、バッタならば住民を救えるのに
ラオスは「飢えない最貧国」と呼ばれる。日々の栄養は不十分でありながら、尽きることはなく、また先進国とは異なる手法で食物を手に入れているため先進国の論理は通じにくい。そんなラオスで暮らす人々に充分な栄養を届けるためにはどのようなアプローチが可能なのか。昆虫食を研究し、ラオスで支援活動を行ってきた「蟲ソムリエ」佐伯真二郎氏のエッセイを紹介する。」
・アンチコオロギな「蟲ソムリエ」がラオスへ降り立った目的
・ラオスに点在する「コオロギ養殖の跡地」
・長らく昆虫食は保健関係者の「認識の外」にあった
・ラオスでは養殖する意味があまりない、畜産物としての「コオロギ」
・味も能力も高い、バッタならば住民を救えるのに
「ラオスの農村部では現金で食品を買うことがほぼなく、主な「おかず」は豊かな自然環境から調達される野生食材だ。夕方になり、農作業から大人たちが帰ってくると、キッチンから煙が立ち上り、学校帰りの子どもたちと合流してみんなでおかずを探す。田んぼを越え、畦道や小川、藪の中へ、ヘッドライトの明かりが散らばっていく。季節に応じて見当をつけた場所をガサガサすると「おかず」が捕まり、その日の夕食になる。ある時はカタツムリやヘビ、またあるときはネズミやヤマアラシ、そしてまたある時は、旬の昆虫だった。」
「この「冗長性」つまり、一つの食材が手に入らなくても別の食材が手に入る、豊かな自然環境と伝統知識が、彼らの栄養を不十分ながら支えてきたのだ。そのためラオスは「飢えない最貧国」と呼ばれる。私たちのような先進国の支援者が、彼らの生活を変えようと動く際、豊かな自然を破壊してしまえば、現地の栄養状態は逆に悪化するだろう。このような自然環境を含め総合的に栄養と健康を支える発想は「ワンヘルス」と呼ばれる。」
「「栄養」が現場に足りないならば、外から持ってくれば解決するだろうか?
しかしラオスには金がない。それであれば、安価な飼料を買ってきて、現地で付加価値の高い食品に転換することはできるだろうか。それはつまり畜産だ。
ラオスでよく食べられている昆虫類を増やすことができれば、必要な栄養を賄うことができるかもしれない。照準は、タイで養殖に成功していたコオロギに絞られた。」
「私たちは彼らに無理強いをすることなく、村へ導入できるタイミングを待つことにした。2018年にラオスでトノサマバッタを採集し、ひっそり事務所で養殖しながら、郡の農林局から村でのバッタ養殖の許可が出たのはそれから5年後、プロジェクト終了直前の2023年9月だった。決め手になったのは職員に「5年養殖してるけど、脱走してないでしょ?」と養殖の様子を見てもらったことだ。やはり「前例」は交渉力がある。その頃になると、隣国タイでちょっとしたバッタ養殖ブームが始まっていたことも後押しになった。理由は原油高にともなう飼料の高騰だそうだ。「タイで人気だから、こっちでもやってみたい」とのこと。「だから5年前に言ったじゃん!」と思ったのだが、それほど前例のないチャレンジをラオスで合意形成し、軌道に乗せることは難しかったのである。」
小松 仁

