21世紀は「パーパス経営」の時代。資本主義からDXを駆使した「志本主義」へ | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
名和高司さん「21世紀は「パーパス経営」の時代。資本主義からDXを駆使した「志本主義」へ」(Forbes JAPAN)がちょっと面白い。
名和高司(なわ・たかし)
◎一橋大学ビジネススクール客員教授。
東京大学法学部、ハーバードビジネススクール卒業。三菱商事を経て、マッキンゼーで約20年間勤務。自動車・製造業プラクティスのアジア地区ヘッド、デジタル分野の日本支社ヘッドなどを歴任し、2010年より現職。多くの企業の社外取締役、シニアアドバイザーを兼任。2014年よりCSVフォーラムを主宰。2022年より京都先端科学大学教授を兼任。著書に『パーパス経営』『経営変革大全』『全社変革の教科書』『CSV経営戦略』『シュンペーター』など多数。
「今までキャピタルというのはそもそも基本的にお金でした。ヒト・モノ・カネで言うとカネ中心主義、それ自体は耐用年月は過ぎていて、お金は社会に有り余っています。モノもかなりコモディティ化している。その中では、ヒト自体が非常に希少価値があり、ヒト・モノ・カネの中で、大きく見直されるべきキャピタルだと思います」
「ヒト中心に価値観が変わると、パーパスという概念が強く作用してくることになる。
「これまで人の欲望が資本主義を動かしてきた。これに対して、明るい未来を何とかつくりたいという人の想いが動かす時代になってきています。私の大先輩である伊丹敬之先生(一橋大学名誉教授)はそれを人本主義と言っていましたが、私はもう一段深め、“パーパス=志”に基づく“志本主義”という言葉を使い始めました。
“志”は、士の心と書きます。“士”は、プロフェッショナルの意味で、求道者、つまり道を究める人。そういった人の想い、心が“志”になるんです。“パーパス”は存在意義と訳されることが多いですが、“志”はそれよりも日本人にわかりやすい。古来の想いも込められていますから、“志本主義”と名づけました」」
「そして、そんなパーパス経営を実現させるには、3つの共感要件「ワクワク・ならでは・できる」が必要だと提案する。
「まず、“ワクワク”。抽象的な、そのパーパスを聞いてワクワクすることがすごく大事。これがないと、取って付けたような話になってしまう。次に、“ならでは”。同業他社にはなく、その会社しかできないということ、そのひねりがとても大事。3つめは“できる”。それを聞いて、社員だろうと、お客さまだろうと、この会社ならできる、と実行が担保されることが伝わるかどうか。この3つが、パーパスをきれいごとで終わらせないポイントだと思います」」
「DXは、要するにデジタルを活用して企業経営にイノベーションを起こし、業務やビジネスモデル自体を変革していくこと。イノベーションには、スピードとスケールが必要ですが、残念ながら日本ではスピード感に欠け、POC(Proof of Concept:新しい概念や理論、原理、アイデアの実証を目的とした、試作開発の前段階における検証やデモンストレーション)の域を出ないものが多い。欧米や中国では、それをいち早く社会実装して、どう大きく育てるかの勝負をしているのに、日本の企業はスピード感がなく、スケールが圧倒的に小さい。そこを本当はデジタルを使って撃ち抜かなくてはならない」
「DXでいうと、Dは当たり前で、Xでつまずく企業が大変多い。現場は忙しくて、匠の仕事に追われてしまっている。イノベーションの中でデジタルを活用し、まずは現場の業務を変革していく。いかにムダを省くか、ムダな仕事をやめるかが問題解決の1丁目1番地で、小さな取り組みから大きく、経営全体に変革の波を広げていくことが肝要です」
小松 仁