RIETI - 日本のスタートアップ企業の成長要因:Resource-based view分析

 

「RIETI - 日本のスタートアップ企業の成長要因:Resource-based view分析」がちょっと面白い。

 

浜口 伸明(ファカルティフェロー)

ジョアン・カルロス・フェハス(リオデジャネイロ連邦大学)

 

「政府は2023年に「スタートアップ育成5か年計画」を表明し、先端技術領域のイノベーション、雇用増大、社会問題解決など、多様な目的でスタートアップ企業の活躍に強い期待を表している。確かにスタートアップ企業は、前例にとらわれない柔軟な対応、意思決定の速さ、革新的な製品で市場を一気に独占できる可能性などの、若い企業であることの強みがあるが、同時に、組織が未整備、顧客との関係が弱い、技術が未成熟で市場に対応した製品化ができていない、新規性のある製品が市場に受け入れられるまで時間がかかる、競合する既存企業が参入を阻もうとする、資金調達や人材獲得の競争で既存の企業に劣後する、などの、若い故の弱みもある。「弱み」を克服して「強み」を発揮する要因は何か、を探る研究は未知の領域が残されている。」

 

「そこで本論文の著者は、2023年度に設立後3年以上10年以下の高度技術分野の企業5140社を対象に「スタートアップ企業の成長要因に関する調査」(以下、RIETI調査とする)を実施し、739社から回答を得た。RIETI調査の質問票は事前調査として行った理論的考察Hamaguchi and Ferraz (2023)に基づいてResource-based view(RBV)の視点で構成されている。RBVでは企業の成長要因を企業の内部資源、市場関係、不確実性の3つの観点から分析する。」

 

「スタートアップ企業の全体的傾向

RIETI調査の集計結果から日本のスタートアップ企業に次のような傾向が認められる。回答企業の98%はすでに売上げがあり、自社の商品・サービスがローンチされた段階にある。売上高が「1,000万円未満」が135社(19%)、「1,000万円から5,000万円」の企業が252社(35%)、「5,000万円から1億円」の企業が117社(16%)あり、売上げが「1億円超」だと回答した企業は187社(26%)であった。その一方で、多くの企業は事業が成長していないか、成長していても人材獲得が進んでおらず、60%が「従業員なし」または「1名」で創業し、本調査時点まで3~10年が経過しても「従業員なし」または「1名」である企業が40%存在する。特許保有の頻度が低く知財戦略の取り組みも遅れているようである。創業者社長は中年層以上の年齢で、必ずしも高学歴でもない。高度な科学的知識よりも、実務経験、特に経営者としての経験を有し、職務経験を通して形成された人的資本が起業に活用される傾向がある。」

 

 

小松 仁