Modern Times | VRが人類から奪うもの、与えるもの

 

Modern Times | VRが人類から奪うもの、与えるもの」がちょっと面白い。

 

「VR技術の発展は、人類に何をもたらすのだろうか。今や、視覚や聴覚だけでなく、嗅覚や感触まで再現できるようになって、技術は人間をいかに変えてしまうのか。感覚史を研究する久野愛氏が読み解く。」

 

「・進化し続けているVR

・「いま・ここ」を共有しない、個人的仮想体験

・身体が「虚構」となるVR

・浮遊するシニフィアン

・複製技術は人から何かを奪いさるだけのものなのか

・VRで再現された感覚を空虚なフィクションだと断罪する前に」

 

「同時にこれは、VRやAI技術全般が孕む問題を暴露することでもある。例えば、これらの技術が犯罪に用いられるリスクや、既存の人種・ジェンダー規範が埋め込まれたアルゴリズムによって助長されうる差別や偏見、技術へのアクセスの違いによる情報格差などはすでに広く指摘されている。こうした問題に目を向ける—そしてこれらの問題に気づいていない人たちに本当の意味で目を向けてもらう—ためにも、ランシエールが述べるように、そうした諸問題について「いかなるイメージを作り出さなければならないか」という「表象的な問い」から脱却し、代わって「感性論的問い」を提起することが重要なのではないだろうか。換言すれば、支配的な言説や社会規範、権力が、ど・の・よ・う・に・イメージを作り出しているのかを探究し、さらには既存の秩序を分断し再構成すること、つまり「現実的なもの」として固定されたイメージに対して、そのフレームをかけかえ、揺さぶることで、別の「現実的なもの」を対置するのである。」

 

久野愛(ひさの・あい)

東京大学大学院情報学環准教授。東京大学教養学部卒業、デラウエア大学歴史学研究科修了(PhD,歴史学)。ハーバードビジネススクールにてポスドク研究員、京都大学大学院経済学研究科にて講師を務めたのち、2021年4月より現職。専門は、感覚・感情史、ビジネスヒストリー、技術史。『Visualizing Taste: How Business Changed the Look of What You Eat』(ハーバード大学出版局,2019年)でハグリー・プライズおよび日本アメリカ学会清水博賞受賞。近著に『視覚化する味覚-食を彩る資本主義』(岩波新書、2021年)。

 

小松 仁