パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

 

「パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因」(冷泉彰彦ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト ニューズウィーク日本版)がちょっと面白い。

 

「アメリカの大学におけるパレスチナ支持の学生運動は、さらに拡大し続けています。コロンビア大学に始まり、NYU(ニューヨーク大学)、イエール大学、MIT、ハーバード大学、UPenn(ペンシルベニア大学)など、東北部でまず激しくなりました。これに続いて、西海岸ではUSC(南カリフォルニア大学)やスタンフォード大学でも「テント村」が出現。これを排除するために警察が導入されて逮捕者が出ました。」

 

「私の住むニュージャージー州でも、プリンストン大学で校舎占拠が発生し、ポスドク、院生、学部生12名が逮捕。また州立のラトガース大学でもテント村が出現しています。これからは、各大学でどの程度の逮捕者が出るか、また5月に多く行われる各校の卒業式が実施できるかが焦点になっています。既にUSCでは卒業式がキャンセルされました。」

 

「今回の学生運動とその取り締まりですが、ベトナム反戦運動やウォール街「占拠デモ」など過去のアメリカにおける、若者の政治活動と比較すると、大学当局や警察の姿勢がかなり強硬という印象があります。一方で、そうした強硬姿勢への反発も強く、相互に対立が激化している面があります。

その背景には大きく2つの要因があると考えられます。」

 

「1つは、世代感覚のズレという問題です。現在の大学生、つまり18~22歳というのは、2001年の「9.11テロ」以降に生まれています。そして、物心がつく頃にはブッシュ政権がイラク戦争の失敗で批判されており、オバマ政権からトランプ政権の時代に10代を過ごしています。

ですから、全米がテロの脅威を感じた時期の空気感は知りません。反対に、イラク戦争の行き詰まり、アフガン戦争の泥沼化と撤兵といった時代の空気を吸って成長した世代です。まして、パレスチナが多くの国に承認される前に、PLOやPFLPなどが武闘路線を取っていた時代のことは全く知りません。」

 

「2つ目の要因は政治的分断です。例えばニューヨーク市における、イスラエル支持派とパレスチナ支持派のデモは、昨年10月7日のハマスによる奇襲テロと、これに対するイスラエルの軍事行動が始まってすぐに発生しています。ですが、今回のデモやテント村がエスカレートした契機となったのは、約2カ月後の12月に行われた連邦議会における公聴会で、各大学の学長が批判に晒されたという事件でした。」

 

パレスチナ支持の学生らが占拠したコロンビア大学の建物 Mary Altaffer/Pool/REUTERS

 

小松 仁