IBM、量子エラー低減へ総力戦 集積度より忠実度を優先 - 日経テックフォーサイト (nikkei.com)

 

「IBM、量子エラー低減へ総力戦 集積度より忠実度を優先」(日経テックフォーサイト)がちょっと面白い。

 

「米IBMは、量子コンピューターの最大の課題である計算エラーを低減する研究開発に注力する。ハードウエアとソフトウエアの両方を改善していく総力戦で、エラー低減を狙う。

超電導方式の量子コンピューター開発で世界トップを走るIBMは、エラー率の低い量子プロセッサーを複数接続することで、量子コンピューターのスケーリング(システムの大規模化)を進める。IBMは2023年12月、133量子ビットの新プロセッサー「Heron」と、Heronを3つ搭載した量子コンピューター「IBM Quantum System Two」を発表した。Heronはチップ上にエラー低減機構を設けることによって、同社で最も低いエラー率を達成している。」

 

「IBMは、エラーを低減する様々な技術の開発に取り組んでいる。例えば、Heronには量子ビット間の接続を制御するチューナブルカプラーを搭載することで、エラー率を従来品「Eagle」の5分の1に抑えた。その他にも、冷凍機の大型化や絶縁性の向上、量子ビットの相互影響(クロストーク)を減らすユニット設計など、ハードの改良を日々進めている。

一方で、量子コンピューターの計算精度を高めるには、ソフトウエアへのアプローチも欠かせない。例えば、量子コンピューターでアルゴリズムを実行するためのプログラミングモデルである「Qiskit Runtime primitives」には、エラーを抑制する機能を採用している。これは、量子命令セット回路を量子ハードウエア上で実行するときに、古典コンピューターのリソースを利用しながら処理を最適化する。

AI(人工知能)を使用して量子入力を最適化する取り組みも進める。強化学習を利用して量子回路を最適化することで、量子状態を操作する量子ゲートのゲート数を減らして計算時間を短縮したり、計算精度を高めたりできるようになる。」

 

「IBMは量子ビット間を相互接続して、大規模システムでも量子状態を安定的に維持できる技術も開発する。例えば、チップ上で離れた位置にある量子ビット同士を接続するC-coupler(Cカプラー)はその1つだ。量子エラー訂正符号(QECコード)の中で最も有望とされるqLDPC(quantum low-density parity check)コードを利用すれば、効率的にエラーを低減できるようになる。」

 

「実用的な量子コンピューターを実現するには当面、古典コンピューターを組み合わせたシステムが必要になる。IBMはこの考えに基づいて構築したシステムをQuantum-Centric Supercomputer(量子を中心としたスーパーコンピューター)と定義する。IBM Researchで量子プロセッサー技術を担当するIBMフェローのMatthias Steffen(マティアス・シュテフェン)氏は、「10万量子ビットの量子セントリック・スーパー・コンピューターを構築すれば、実用的な問題を解けるようになる」と期待する。」

 

「クラウダー氏は、「おそらく量子プロセッサーの集積度はまだ限界に達していないが、今後は(品質の高い量子プロセッサー同士の)モジュール化でシステムを大規模化していくつもりだ」と語る。ノイズの少ない設計やエラー訂正技術、量子ビットの最適な配置などについて、様々な研究者がホワイトボードに書き出しながら日々議論しているという。」

 

スコット・クラウダー氏は量子プロセッサーCondorを実装した大型パッケージを紹介した

 

 

小松 仁