誤り訂正に画期的技術、量子計算は新時代へ 24年展望 - 日経テックフォーサイト (nikkei.com)

 

「誤り訂正に画期的技術、量子計算は新時代へ 24年展望」(blueqat代表取締役 湊雄一郎氏 日経テックフォーサイト)がちょっと面白い。

 

「量子コンピューティングの世界では現在、大きな変化が起きている。これまでは不完全な量子コンピューターに、現行の古典コンピューターを組み合わせる方式の開発競争が進んできた。しかし、エラー訂正技術の発展で今後はその状況がリセットされ、新しい段階に進もうとしている。」

 

「これまでの量子コンピューター開発の流れを振り返ると、2012年にカナダD-Wave Quantum(Dウエーブ・クアンタム、当時の社名はD-Wave Systems)が開発した量子アニーラーと呼ばれる新しい量子計算機の登場が顕著だった。その後、2015年からは米IBMと米Google(グーグル)との間で激しい開発競争が繰り広げられた。この量子コンピューターは実際にはエラーが多く、計算がままならないので、NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum)と呼ばれている。」

 

「NISQコンピューターを単独で利用するのは難しいので、古典コンピューターとのハイブリッドで利用する方法が検討された。しかし、このハイブリッド計算はあまり有用でないことが2021年ごろまでに分かり、静かに量子コンピューターの熱は冷めていった。」

 

「しかし、2021年を境に、全世界で誤り耐性型量子コンピューター(FTQC)と呼ばれるエラーの少ない量子コンピューターの開発機運が高まり、2024年2月現在は世界中のプレーヤーがFTQCへのロードマップを策定することで一致している。

それに合わせて従来のNISQコンピューターをそのまま流用するのではなく、新しいハードウエアを開発する機運が高まっている。例えば、FTQCは誤り訂正と呼ばれるエラー補正機構が必要になるので、これまで開発されてきた量子コンピューターとは全く異なるアーキテクチャーの開発が進んでいる。」

 

「最も顕著な例は、米Harvard University(ハーバード大学)などを中心とするチームが2023年12月に発表した中性原子による誤り訂正技術である。これまでのNISQコンピューターの流用では1量子ビットの誤り訂正も難しかったが、新方式のハードウエアでは40〜48論理量子ビットの誤り訂正を一度に実現するなどブレークスルーといえる成果だ。2024年はさらに量子ビットを増やした誤り訂正技術の開発、光量子コンピューターや半導体量子コンピューターといった新しいハードウエアへの投資が加速する。」

 

ハーバード大学やキュエラ・コンピューティングによる誤り訂正は業界に衝撃を与えた(写真:キュエラ・コンピューティング)

 

湊氏は誤り訂正技術やGPUによる量子計算の発展に期待する

 

小松 仁