「MIT Tech Review: 中国テック規制の深謀遠慮、「振り子の法則」はAI政策にも当てはまるか」

 (technologyreview.jp)がちょっと面白い。

 

「中国の政府は、国内のテック企業を厳しく規制していると思われがちだ。だが、香港大学のアンジェラ・フユエ・チャン准教授によると、政府の規制は国内産業の成長を維持するために、意図的に緩められていることがあるという。」

 

「アリババ(Alibaba)とテンセント(Tencent)を例にとってみよう。2000年代以降、それら2つのテック大手は数多の合併と投資を繰り返してきた。その結果、彼らのビジネス帝国は中国におけるデジタルライフのほぼすべての面を含むまでに拡大した。この貪欲な拡大は、より高い料金と少ない選択肢というユーザーの犠牲の上で成り立ったものだ。しかし、中国の規制当局はその状況を放置した。そして2020年、政府は突如としてテック企業への取り締まりを開始した。過去の合併や買収に対する調査が前触れもなく始まり、独占禁止法違反を犯した企業には多額の罰金が発生した。 これにより、アリババにも28億ドルの罰金が科せられた。」

 

「著書の中でチャン准教授は、次のように主張する。中国のテクノロジー・プラットフォームは、長年にわたって競争の妨害、プライバシーの侵害、ギグワーカーの労働者権利の侵害で非難されてきた。ところが規制当局は、2020年後半に突然企業を監視下に置くまで、3つの分野すべてでそれらを受け入れていたという。そして2022年に取り締まりがピークを過ぎた後、3分野すべてで規制当局は動きを鈍くし、中国企業との妥協に達した。

 著書の例以外でも、「このパターンは、ほぼすべてのセクターに当てはまると思います」とチャン准教授は言う。2010年代半ばのピア・ツー・ピアの融資仲介サービスのような金融イノベーションから、パンデミック(世界的な流行)の間に爆発的に人気が高まったオンライン指導まで、あらゆるビジネスは、規制当局との経験で似たような変化をたどっている。」

 

「「AIは、中国政府が最初から深く関わっているビジネスです」とチャン准教授は言う。中国政府は、AIの開発において複数の役割を引き受けてきた。政策立案者、インキュベーター、AIスタートアップ企業への投資家、研究のサプライヤー、AIアプリケーション顧客などを担ってきたのだ。「今では、成功したあらゆる中国AI企業の背後に地方自治体の存在があります」と同准教授は言う。「その強力な支援は、中国のAIビジネスにより多くの政治的保護を提供するでしょう」。」

 

「現在のAIハネムーン段階

中国のAI業界には、政府の利益が深く組み込まれている。それはつまり、AI業界がしばらく規制の緩い初期段階に留まるということだとチャン准教授は言う。そして、現在の中国のAI規制は欧米における規制よりも緩いと主張する。

 これまでの中国のAI規制から見れば、成長促進派が優勢であるとチャン准教授は言う。「少なくとも米国では、連邦取引委員会(FTC)がオープンAI(OpenAI)に対する調査を開始しています。中国で、CACがバイドゥ(Baidu)やバイトダンス(ByteDance)の調査を開始しているでしょうか。いいえ、そんなことはしていません。将来的にも、何か本当に悪いことが起こらない限り、調査が実施される可能性は非常に低いでしょう」。」

 

「規制取り締まりへの切り替えを引き起こすには、どの程度の事件が必要だろうか。チャン准教授によれば、それには幅広い論争を巻き起こして社会の安定を脅かすような大規模なAIの悪用が必要になるという。もしそうなれば、中国の規制の振り子は再び従順に、厳しい方へと揺れるだろう。

 それが起こるときは、あっという間だろう。「かなりランダムに、まったく唐突に起こるとでしょう。驚かされることになると思います」。」

 

Zhang Angela - Faculty of Law, The University of Hong Kong

 

小松 仁