MIT Tech Review: 遠藤 傑:量子コンピューター実用化を「誤り抑制」で早める理論家 (technologyreview.jp)

 

「MIT Tech Review: 遠藤 傑:量子コンピューター実用化を「誤り抑制」で早める理論家」がちょっと面白い。

 

「NTTコンピュータ&データサイエンス研究所の遠藤 傑(えんどう すぐる)は量子エラー抑制法の理論の中に自然法則の美しさを見いだしながら、実用的な量子コンピューターの早期実現に向けて研究を続ける。

 現在主流となっている「NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer、ノイズがある中規模量子コンピューター)」に対する実用的な量子エラー抑制法を世界で初めて確立。2021年の「Innovators Under 35 Japan (35歳未満のイノベーター)」の1人に選ばれた。」

 

「量子コンピューターのエラーの問題を解決する方法としては、量子エラー「訂正」と呼ばれる方法と、量子エラー「抑制」という方法がある。前者の「訂正」は多数の物理量子ビットによって論理量子ビットの表現を冗長化することで、エラーが生じても元の状態に戻せるようにする方法である。ただし、意味のある計算を実行するには膨大な量子ビットが必要とされ、実用化は数年先と考えられている。これに対して後者の量子エラー「抑制」は、量子コンピューターの出力を古典コンピューターで統計処理し、正しい計算結果を推定する手法である。これは一般的に、数十〜数百ビット級の現在の量子コンピューター(NISQ)において特に有用な方法と考えられている。」

 

「遠藤はIU35選出後も、この量子エラー抑制の分野を中心に研究を続けている。特に大きな成果として挙げられるのは、2022年7月に論文発表した「一般化量子部分空間展開法」と呼ばれる手法だ。量子エラー抑制法はさまざまな手法が提案されているが、一般化量子部分空間展開法はそれら手法を統合して1つのフレームワークに落とし込んだ「究極形」ともいえるもの。NTTコンピュータ&データサイエンス研究所と東京大学、大阪大学、産業技術総合研究所の共同研究で開発した。

 また、シンガポールのナンヤン工科大学、名古屋大学との共同研究により、世界で初めて量子エラー抑制の原理的な限界を示した。そして、大阪大学と産業総合技術研究所とでは、全く別の分野である非マルコフ物理と量子エラー抑制を結びつけるといった、量子エラー抑制の基礎物理的側面の研究もしている。」

 

遠藤 傑(NTTコンピュータ&データサイエンス研究所)/提供写真

 

小松 仁