早大発NanoQT、量子計算機を大規模化 光ファイバーで - 日経テックフォーサイト (nikkei.com)

 

「早大発NanoQT、量子計算機を大規模化 光ファイバーで」(日経テックフォーサイト)がちょっと面白い。

 

「早稲田大学発の量子スタートアップである米Nanofiber Quantum Technologies(ナノファイバー・クアンタム・テクノロジーズ、NanoQT)は、新方式の量子コンピューターの開発に取り組む。光ファイバー共振器を量子計算に応用する独自の技術で、様々な用途に利用できる大規模量子コンピューターの実現を目指す。米国に本社機能を移し、人材採用や資金調達を加速させる。

 NanoQTが開発する量子コンピューターは「ナノファイバー共振器QED(量子電気力学)」と呼ぶ技術を応用したものだ。一部の波長の光だけを閉じ込める光ファイバーの表面近くに原子を並べて、光子と原子を相互作用させることで量子計算に利用できるようにする。早稲田大学理工学術院教授の青木隆朗氏が開発した基礎技術を基に、NanoQTは同方式で世界初となる量子コンピューターの実機や関連サービスの開発に取り組んでいる。」

 

「光ファイバーの近くにある原子同士は量子的に接続された状態なので、計算のために原子の配置を変える必要がなく、制御しやすい。複数のユニットをファイバーでネットワーク化することで、量子コンピューターの規模を容易に拡大できる。市販の光ファイバーを加工して利用するので製造コストも安価だ。

NanoQTは、量子ビットの原子としてイッテルビウム(Yb)を利用する。Yb原子は取り扱いが難しい半面、忠実度(量子もつれの程度)が高く、量子性を保つ「コヒーレンス時間」が長いという長所を持つ。Yb原子の知見を持つ研究者は世界でも限られており、量子分野での活用は進んでいないが、同分野に詳しい京都大学出身の研究者を採用することで研究を優位に進めている。」

 

「NanoQTは2022年4月に設立したばかりのスタートアップだが、2023年8月に米国子会社に本社機能を移し、活動を本格化させた。現地企業との協業や優秀な海外人材の採用がしやすくなる。海外の有力投資家から出資を受けやすくなる利点もある。

NanoQT共同創業者兼最高経営責任者(CEO)の廣瀬雅氏は「グローバルでのビジネス展開を優位に進められる」と語り、研究開発拠点も米国に移す方針を示した。実際にNanoQTは創業以来、資金調達を順調に進めている。2022年8月に早稲田大学ベンチャーズ(WUV)から2億円、2023年9月に米国や日本のベンチャーキャピタルから850万米ドル(約12億3000万円)を調達した。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援事業にも採択され、補助金を受ける予定だ。」

 

「NanoQTは、海外の大学や地方政府が実施する様々なスタートアップ支援プログラムにも参加する。例えば、米メリーランド州商務省の支援を受けて、米University of Maryland(メリーランド大学)構内に理論研究拠点を開設する予定だ。米国で6件の単願特許を出願済みで、さらに2件を追加申請中だ。

人材採用も積極的に進める。2023年までに米California Institute of Technology(カリフォルニア工科大学)や、英University of Oxford(オックスフォード大学)、Swiss Federal Institute of Technology in Lausanne(スイス連邦工科大学ローザンヌ校、EPFL)、京都大学などで学位や博士号を取得した科学者及びエンジニアを10人採用した。今後も人材獲得を続け、2024年中に20人体制にする予定という。」

 

ナノファイバー共振器QEDを利用した量子コンピューターの実験装置

 

 

小松 仁