2024年、円安の出口と日本経済のバランスをどう取るか?|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

 

冷泉彰彦さん(ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト)の「2024年、円安の出口と日本経済のバランスをどう取るか?」(ニューズウィーク日本版)がちょっと面白い。

 

「現在、仮に金融政策を急速に円高へ振った場合、その弊害としては、日本発の多国籍企業の収益が円から見た場合に大きくしぼんでしまうことが考えられます。本当は、海外での利益はほとんどが海外で再投資されるので儲けたカネは日本国内には還流しません。また稼いだ利益を配当しても、多くは国外の株主に流れてしまいます。基本的に海外での生産、販売活動は日本のGDPにカウントされません。ですから、現在の「空前の利益」というのも半分は幻です。」

 

「ですが、仮に円高になって、その「幻かもしれない海外での利益」が円建てで大きくしぼんでしまうようですと、国内経済のムードは大きく暗転します。輸出に頼り貿易が黒字であった時代とはまた別の「円高不況」が訪れるかもしれません。賃上げを進める政策も大きく足を引っ張られる可能性があります。日銀の植田総裁は、この点を深く警戒しているのだと思います。」

 

「では、このままずっと円安政策を継続することは可能かというと、そこには難しさがあります。今はまだ、国家の債務というのは、ある程度までは個人金融資産で相殺されています。ですが、やがてそのバランスが崩壊し、それでも円安が継続し、また空洞化が加速化して国内の競争力がしぼんだままですと、ある臨界点を超えたところで、国債が大きく売られ、円の価値がどんどん下がり、悪い金利高が暴走するかもしれません。

 その頃までには、日本経済は規模的に縮小していて、IMF(国際通貨基金)から見て、大きすぎて潰せない規模を割り込んでいるかもしれません。そうなると、現在の円安政策が行き過ぎた延長には、債務不履行、つまり国家としての破綻というシナリオが可能性として出てきます。」

 

「長期化した円安トレンドのために、「甘やかされてきた」多国籍企業ですが、この次の円高のタイミングを捉え、内部の大改革を行って空洞化を阻止することができれば、日本の生産性低下の流れにはブレーキをかけることもできるでしょう。そうしたプロセスも日本経済に取っては向かい合うべき道であると思います。いずれにしても、円安政策の出口をどうソフトランディングさせるかというのは、2024年の日本経済にとって、大きな課題だと思います。」

 

 

円安解消と経済失速のバランスをどう取るか、日本経済は難しい舵取りを迫られている StreetVJ/Shutterstock

 

小松 仁