RIETI - ジップ法則と企業の成長ダイナミクスについて

 

「RIETI - ジップ法則と企業の成長ダイナミクスについて」がちょっと面白い。

 

荒田 禎之(研究員)

 

「企業の規模というのは様々である。GAFAのように売上が何十兆円にもなる巨大企業もいれば、商店街にある家族経営の定食屋のような小さな企業も存在する。企業の規模は一見すると企業ごとに全くバラバラなように見えるが、経済学の分野ではこの企業規模の異質性(つまり、企業規模のバラバラの程度)には1つの統計的な規則性があることが知られている。」

 

「図(a)は日本における企業規模の確率分布を示したものである(ここでは両辺は対数値)。この図から分かる通り、企業の売上約1億円程度の規模の企業が最も多く、当然ながらそれより規模の大きな企業は数としては減少する。しかし、この図で特徴的なのは、この減少の仕方が、両辺を対数にとった場合には右下がりの直線になるという点である。この規模の分布のテール部分(つまり規模分布における大企業に該当する部分)が直線になるという特徴は日本経済のみならず、どの国の企業を対象にしても広く成り立つことが知られており、この分野ではジップ法則(Zipf's law)と呼ばれている。」

 

「このような観察事実を前提に、本論文では、特に社齢の若い企業においてジップ法則が成り立つこととその背後にある企業の成長メカニズムについて、既存のものとは異なる説明を試みた。詳細は論文本体の方に譲るが、企業の成長メカニズムは、長い時間をかけて小さな成長を繰り返すような漸増的なものではなく、短期間に少ない数の大きな成功(ジャンプ)によって急激に成長するものであることが分かった。この2つの成長メカニズムは性質として異なり、ジップ法則はこの後者の企業成長の特性を反映しているのである。経済政策における巨大企業の存在やその育成は近年の重要なテーマであるが、その前提となる企業の成長メカニズムを明らかにしたのが、この論文の政策インプリケーションである。」

 

「今回の分析でまず着目したのは、社齢別に分けた企業規模の分布である。図(b)では、企業を社齢70歳以上(old)、社齢50~70歳(middle)、社齢50未満(young)に分割し、それぞれのグループについての企業規模の分布を示している。その結果、図(a)で観察されたようなジップ法則は、比較的若い企業(社齢50未満の企業)の規模の分布によって成り立っており、社齢の高い企業ではジップ法則が成り立たっていないことが分かった。」

 

 

小松 仁