RIETI - 日立の事業トランスフォーメーションと今後の価値創造

 

RIETI - 日立の事業トランスフォーメーションと今後の価値創造」がちょっと面白い。

 

「RIETIでは、2022年度に「事業ポートフォリオ変革シリーズ」として、日本企業の事業ポートフォリオ変革による経営改革の先進事例を取り上げた。2023年度の同シリーズ第1弾では、経団連21世紀政策研究所との共催により、株式会社日立製作所の変革を紹介する。日立製作所は、2009年の製造業史上最大の赤字を機に経営改革を推し進め、現在は IT×OT(オペレーショナル・テクノロジー)×プロダクトを組み合わせて社会課題を解決する「社会イノベーション事業」を世界中で展開、好業績を続けている。本セミナーでは、2014年に社長に就任され、2016年から6年間CEOを務めた東原敏昭会長を講師としてお招きし、日本企業が取り組むべき経営改革についてお話を伺った。」

 

「2023年3月期の決算で、日立は連結売上収益10.8兆円、従業員が32万2,000名の企業になりました。60%のノンジャパニーズの従業員と40%の日本人の従業員が化学反応を起こし、新たな日立文化を作っています。私は、人財が固定化した多様性のなさが、日本の「失われた30年」の根本原因だと思っています。

 日立は、社会インフラや産業インフラをデジタル技術で変革する、社会イノベーション事業を進めています。1つの例が、コペンハーゲンに導入された24時間ドライバーレスで動く無人運転の運行管理システムです。センサーで人の流れを感知して、電車を待つ乗客に合わせて自動的にダイヤを変える実証を行いました。」

 

「日立は、2009年3月期の決算で7,873億円という、当時製造業最大の赤字を出しました。それ以前にも、上場子会社に助けられて連結の営業利益は黒字であるものの、少数株主に利益が流れて、当期利益は赤字というようなパターンが続いていました。これは、日本の終身雇用に加えて、本音と建前、同調性、完璧主義といった日本人気質の影響が大きく、その中で人財が固定化し組織が硬直化して、「大企業病」や「官僚主義」になっていたからではないかと考えています。」

 

「日立の3つの強みである、オペレーショナル・テクノロジー(OT)、IT、プロダクトを生かそうと、2016年4月1日にビジネスユニット(BU)制に変えました。私が社長兼CEOとしてトップダウンで全部門の問題をマネージする体制にして、さらに全BUで共通化したプラットフォーム「Lumada」(ルマーダ)を導入しました。

 Lumadaとは、日立の技術のショーウインドー、あるいはレゴブロックだと思ってください。過去の実績をショーウインドー化して、さまざまな地域でそれらの商品を組み合わせてお客様に提供しています。」

 

「私が今目指したいのは、自律分散型グローバル経営です。地域ごとにお客様の近いところでビジネスを展開したいのですが、分散するほど逆に共通の経営資源を持たないといけません。

そこでLumadaを開発し、R&Dや調達の共通化も進め、企業理念や創業の精神を全世界共通にすることで、どこでも同じような意思決定ができる形を作りました。これはリスクの分散になりますし、他の地域にも拡張できますし、お客様への対応も迅速化できます。

 実は、この原点は東京圏輸送管理システムから来ています。ある駅でコンピュータが故障しても、他の駅では動き続け、かつ段階的に一駅ずつ拡張できるという、今のグローバル経営に近いものでして、これが1つのヒントになっています。」

 

「日立の企業理念は、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」ことです。最初は意見が違ってもハーモニーを大事にする「和」、お客様のクレームに対しても嘘をつかない「誠」、そして失敗しても何度でもやり直す「開拓者精神」を大事にしています。社会が求めていることを自分事として考え、日立の資源をフルに活用して社会に出し、お客様に喜んでもらうことで元気を出す。このスパイラルの成長が従業員の大きなドライビングフォースになると思っています。自分事で考える主体性、それから多様性を理解し、理解される共感力、そして人を巻き込む力を意識してほしいと思います。」

 

 

小松 仁