MIT Tech Review: 蓄電池だけじゃない、送電網向けエネルギー貯蔵の選択肢 (technologyreview.jp)
「蓄電池だけじゃない、送電網向けエネルギー貯蔵の選択肢」(MIT Tech Review)がちょっと面白い。
「再生可能エネルギーの占める割合が増えるにつれ、送電網向けエネルギー貯蔵の必要性が高まっている。最近になって、さまざまなエネルギー貯蔵のアプローチが企業から提案されている。」
ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]
米国版 気候変動担当記者
MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
「水に頼らない重力を利用したエネルギー貯蔵設備を再考しているグループもいくつか存在する。スイスのエナジー・ヴォールト(Energy Vault)は、エネルギーを蓄えるための巨大なレンガを昇降させるエレベーターを備えた設備を作っている。英国のグラヴィトリシティ(Gravitricity)は地下、おそらく古い鉱山の坑道で、巨大な重りを持ち上げることを検討している。」
「推進派は、重力を利用した設備は、長期間のエネルギー貯蔵に対する需要を満たすのに役立つと主張している。しかし、このような設備を構築するには相当な手間がかかる上、保守管理の負担が重い可能性があり、将来性については懐疑的な意見もある。エナジー・ヴォールトは、中国で計画された設備の建設を進めているが、最近では大量のリチウムイオン電池を設置し始めている。」
「圧縮空気を利用したエネルギー貯蔵施設は、世界で2カ所しか稼働していない。ドイツと米国アラバマ州である。これまで、この種の施設は化石燃料の存在に縛られていた。これらの施設は通常、天然ガス発電所と併せて機能するものだからだ。しかし今、企業は圧縮空気を利用したエネルギー貯蔵について考え直し、再生可能エネルギーで発電した電力の貯蔵に利用したいと考えている。そして、この種のエネルギー貯蔵設備を使える場所を拡大したいとも考えている。
2023年の初め、カリフォルニア州の地方自治体は、世界最大の圧縮空気貯蔵施設を建設中のハイドロストア(Hydrostor)と契約を締結した。ハイドロストアは、自然の地質条件に頼るのではなく、地中深くに3本の立て坑を掘って圧縮空気を貯蔵する予定だ。
10億ドル規模のプロジェクトで、早ければ2028年に稼働する。空気のみを使用してエネルギーを蓄え、カリフォルニア州の送電網の円滑化に貢献できるかもしれない。」
「ファーボ・エナジー(Fervo Energy)というスタートアップ企業は、その地熱井戸を使ってエネルギーを蓄える方法を提案している。井戸に水を送り込み、時間をかけて地中の水の圧力を高め、その圧力が解放されたときに、地熱発電所は通常よりも多くのエネルギーを生み出せるのだ。
これはエネルギー貯蔵における興味深い工夫であり、将来、地熱発電所ができることをすっかり変えてしまう可能性がある。本誌のジェームス・テンプル編集者は、ファーボ・エナジーの試験場を訪問し、このスタートアップ企業の取り組みをまとめた記事を公開している。」
Fervo Energy
小松 仁
