経済産業研究所RIETIの「財政と金融の連携 新たに」(小林 慶一郎プログラムディレクター・ファカルティフェロー)がちょっと面白い。

 

 

「第1に、世界的なインフレに直面して主要国が金利の引き上げに動くなかで、日本の金融政策の特異性が際立ち、金利上昇から財政悪化へという連想が生まれ始めている。

第2に、防衛費、子育て支援、グリーントランスフォーメーション(GX)など巨額の歳出拡大が次々と打ち出され、財政のリスクが強く認識された。

第3に、日本の家計や投資家に外貨建ての貯蓄手段が普及し、円建て資産へのこだわり(ホームバイアス)が薄れ始めている。さらに2022年秋の英国における市場の混乱は、しっかりした政策運営をしているとみられていた国であっても容易に市場の信認を失い得ると示した。日本にとっても大きな教訓となった。」

 

「これまでの政策運営は、株価を上昇させ、失業率を低下させるなどしたかもしれないが、限界もあった。教科書的な経済学の想定では、財政政策や金融政策は一時的な需要不足を穴埋めするために将来の需要を先食いするだけで、経済成長率を高める効果はない。

 

図:財政金融政策では成長率は上がらない

 

00年前後からの非伝統的な金融政策の膨大な研究でも、長期的な経済成長率を金融政策で高められると主張する研究はほとんどない。なんらかの原因で起きた「需要不足」を一時的に解消するのが金融政策の目標だ、とするのが主流だ。」

 

「筆者には、そうした姿勢の背景に「戦後日本というシステムは米国に押し付けられた借り物で、自分たちが命を賭して守るべき価値ではない」という現実拒否感があったように感じられた。その感覚はいまでも続いている。

われわれ現在世代はこの流れを克服し、真に持続的な日本を後世に引き継ぐために、長期的な全体戦略を構想し実行する責任を引き受けるべきである。」

 

RIETI - 財政と金融の連携 新たに

 

小松 仁