MIT Tech Review記事「メタバース、ネットの『分身』が生身に与える計り知れぬ影響」(Tanya Basu 米国版 「人間とテクノロジー」担当上級記者)がちょっと面白い。
「フェイスブック(メタに社名変更)が注力する『メタバース』の世界では自分そっくりのアバターを作れるようになるという。自分にそっくりなアバターを作ることができるのは嬉しいかもしれないが、身体イメージの問題をさらに悪化させる可能性があると懸念する声もある。」
「問題をさらに複雑にしているのは、フェイスブックの実質現実(VR)/拡張現実(AR)研究部門であるリアリティ・ラボ(Reality Labs)が、コーデック・アバター(Codec Avatars)というプロジェクトで、写真のようにリアルなアバターの開発に取り組んでいるというメタの発表だ。ザッカーバーグCEOは、感情を分かりやすくしたり、髪や肌のレンダリングを改善したりするなど、アバターをより人間らしい外見にする開発においてグループが成し遂げた進歩を強調した。
『人は必ずしも、自分自身とまったく同じ外見を求めるとは限りません』とザッカーバーグCEOは言う。『だからこそ、人は髭を剃ったり、着飾ったり、ヘアスタイルを整えたり、メイクをしたり、タトゥーを入れたりするのです。もちろん、メタバースでは、その他にもさまざまなことができるようになります』。」
「コロラド州立大学のジェニファー・オグル教授とソウル大学校のジュヨン・パク准教授は今年、アバターが身体イメージに与える影響の解明に役立つ可能性のある小規模な研究を実施した。2人は、身体イメージに関する不安を抱えているが治療は受けていない、18~21歳までの女性18人を募集して2つのグループに分けた。一方のグループはボディ・ポジティブ(自分の身体をあるがままに受け入れる)プログラムに参加した後、自分そっくりのバーチャル・アバターを作成してもらい、もう一方のグループはボディ・ポジティブ・プログラムに参加するだけにした。
結果、女性にとって自分自身を第三者の視点で見るのがいかに困難であるかが示された。ある女性は次のように述べた。『アバターの見た目が、気に入りませんでした。(中略)よく分かりませんが、ただ、自分はこんな外見じゃないと思いました。(中略)自意識過剰になったような感覚になり、ちょっと自己嫌悪に陥りました』。ボディ・ポジティブ・プログラムにより自己肯定感が一時的に向上したが、自分のアバターを見た途端にその効果はなくなったのだ。」
「フェイスブックは、インスタグラムが十代女性の身体イメージに悪影響をおよぼすことを示す社内調査結果を隠していたとして批判を受けている。 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、インスタグラム・アプリのコンテンツは体形やライフスタイルに集中しており、ユーザーは身体醜形障害を発症しやすくなると報道した。一方、主にアバターを通じて自己アピールすることが多くなるメタバースでは、傷つきやすい人々は自分の外見を変えなければならないとのプレッシャーを感じるかもしれない。さらに、メタバースのカスタマイズ可能なアバターは『人種的不公平と不平等を助長する』のに使われる可能性もあると、マーティン(西オーストラリア大学の博士課程に在籍している法学者)は話す。」
Daniel Zender
MIT Tech Review: メタバース、ネットの「分身」が生身に与える計り知れぬ影響 (technologyreview.jp)
https://www.technologyreview.jp/s/261415/the-metaverse-is-the-next-venue-for-body-dysmorphia-online/
IT起業研究所ITInvC 代表小松仁
