財務総合政策研究所(財務省の研究所)令和3年度職員トップセミナーで紹介されている元プロサッカーのスーパースター中田 英寿さんの話が面白い。
「(2006年にサッカーを引退された後、なぜ世界の旅に出られたのでしょうか。)
お金を稼ぐために何かをするという選択肢は僕にはなかったので、サッカーと同じくらい好きになれることを探すために世界中を旅することにしました。それまでサッカーしかやってこなかったので、自
分が知らないことを知り、自分が本当に好きなこと、興味あることを見つける旅をしました。そのときは、日本に年に1か月もいなかったと思います。
素晴らしいリゾートから貧困地域や紛争地域まで様々な国に行き、時には各地で活動している国連やNPO/NGOなどとも連携しながら、なかなかいけない地域にも行きました。」
「世界の旅の中で、発展途上国における社会貢献活動が僕にとってはとても興味深かったので、自分にどういうことができるのかを考えたり、また財団を立ち上げたりしました。一方で、世界中どこへ行って
も、自分がサッカー選手として見られていると同時に『日本人』として見られていることが頭にひっかかっていました。皆さんも海外に行けば自分は外国人だ、という認識はあると思いますが、日本人として海外に行っているという強い認識はあまりないのではないでしょうか。でも、旅をする中で世界中の人々から日本のことを聞かれ続けることで、自分が日本人であることを強く意識させられました。当時の僕は日本について本当に何も知らなかったのですが、そのとき、日本人として日本を良く知っていることは、価値を持つということに気が付き、日本のことを知らなければいけないと思いました。また、日本でも、例えば初めて会った人と会話の中で出身地の話をする機会がよくありますが、自分の出身地のことを詳しく語れる人をあまり見たことがありません。自分の地元のことですら知らない人が多いのです。そうであれば、国内でも、海外でも、誰よりも日本のことを知っているということは素晴らしい価値があり、また多くの人と話をするきっけかになり楽しいのではないかと思い、日本の事、日本の文化を勉強しようと思いました。」
「10年以上全国を回ることで、地場にしか続いていないような産業だからこその面白さと素晴らしさとともに、抱えている問題点を知ることができました。こんなに素晴らしいものや人たちがいて、でも知られていないことによって斜陽産業になってしまっている、これをどうにか変えられないかと思ったことが会社(株式会社JAPAN CRAFT SAKE COMPANY)を始めるきっかけです。
それは単純に言うと、日本酒も含めた伝統産業を助けたいということではなくて、僕は『これはすごいぞ、これがきちんと国内や海外にちゃんと伝わっていけばすごい産業になるぞ。』と可能性を見ています。
この素晴らしい業界に足りないシステムを考えることは、第三者にしかできないことだと思い、現在会社をやっています。」
株式会社JAPAN CRAFT SAKE COMPANY 代表取締役
1977年生まれ。山梨県出身。2006年、29歳でプロサッカー選手を引退。2009年4月から、全国47都道府県をめぐる旅をスタート。
この旅をきっかけに日本文化に可能性を強く感じたことから、日本文化を発信する事業を多数手がけ、2015年には、「株式会社JAPAN CRAFT SAKECOMPANY」を設立。全国を旅して出会った人・モノ・コトを公式WEBメディア「にほんもの」で紹介しているほか、多言語での書籍の出版、全国の優れた生産者を紹介するラジオ番組「TDK VOICES FROM NIHONMONO」(毎週日曜12:00~)のナビゲータを務め、全国の逸品を取り扱う「にほんものストア」も展開。
2020年4月には立教大学の客員教授に就任し、「伝統産業とマーケティング」を担当。2020年10月、東京国立近代美術館工芸館名誉館長に就任。
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202109/202109k.pdf
IT起業研究所ITInvC 代表小松仁
