MIT Tech Review「所 千晴教授:脱炭素社会へ向けてイノベーターに今求められること」がちょっと面白い。
「SDGs(持続可能な開発目標)の達成やカーボンニュートラルの実現へ向けて需要が高まりつつあるのが、製品のリサイクルに必要な資源分離技術だ。早稲田大学と東京大学で、分離技術の研究を進める所 千晴教授に、研究の現状とイノベーターの条件を聞いた。」
「資源をリサイクルするためには、使用済みの製品から資源になるものを分離して、バラバラにする必要があります。その際の最適な方法を研究しています。
対象によって、機械的にバラバラにする方法もあれば、電気や熱をかけてバラバラにする場合もあります。あるいは、薬剤をかけて取り外すということもあります。それぞれに合った方法を検討し、なるべく省エネルギーで、経済的に分離することを目指しています。対象に合わせた方法を取るので、知識としては物理も化学も使います。また、私たちは関わっていませんが、同じ分野の研究者の中には、バイオ技術を使って目的を達成しようと研究している人もいます。」
「社会全体で環境負荷の低減を目指していても、電気を作るには銅が必要ですし、リチウムイオンにはコバルトやニッケルといった特定の金属が必要になります。今後も資源の需要や消費が増えていく中で、特定の金属資源がいずれ足りなくなるのではないかと私は懸念しています。私だけではなく、世界中の懸念ですね。
だからこそ、限られた金属資源を循環利用することはとても重要になると考えています。金属資源の不足という問題が顕在化する前に、なんとかしたいと注力しているところです。」
「実は、エネルギーの世界では世の中がひっくり返るようなイノベーションは恐らくない、と私は考えているんです。今の技術開発の延長と複数の技術の組み合わせになるだろうと。それよりも、社会の行動変容のほうが影響は大きいかもしれません。イノベーションは、必ずしも技術の話だけではなくて、社会の価値観が変わって行動変容を促すことのほうが、よほど大きなイノベーションになるかもしれません。」
「(最後に、所先生が考える『イノベーター』の条件を教えてください。)
まず、そこに正義感があること。誰もが納得する正義感。別の言葉で言い替えるなら、ミッションや使命感でしょうか。
新しいことに挑戦するときには、必ずいろいろな壁にぶつかります。それを乗り越えるには、『なぜ自分はこれに挑戦するのか』という根本に立ち返るはず。そのときにいちばん大事になるのが、確固たる正義感です。自分はこれで世の中をよくするんだ、これで世の中に役立ちたいんだという強い思い。みんなが共感する正義感がコンセプトとしてあって、それが求心力になると思います。
そして、その次に自分の強みだったり人脈だったり、幅広い知識、行動力といったものが必要になってくる。
私は、研究についても同じだと思っています。なぜこの研究をやるのか、この研究で世の中をどう変えたいのか。私自身、その気持ちの根底にはあるのは、やはり強い正義感だからです。」
所 千晴(Chiharu Tokoro)
早稲田大学理工学術院教授、東京大学大学院工学系研究科教授
1998年、早稲田大学理工学部卒業。2003年、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、博士(工学)取得。早稲田大学助手、専任講師、准教授を経て、2015年より早稲田大学教授。また、東京大学生産技術研究所特任教授を経て、2021年より東京大学教授。早稲田大学ダイバーシティ推進室長。日本学術会議第三部会員、「学術の動向」編集委員長。化学工学会、粉体工学会、環境資源工学会、エコデザイン推進機構理事。JX金属株式会社社外取締役。JST未来社会創造事業研究代表。
MIT Tech Review: 所 千晴教授:脱炭素社会へ向けてイノベーターに今求められること (technologyreview.jp)
https://www.technologyreview.jp/s/254894/what-innovators-need-to-do-now-for-a-decarbonized-society/?fbclid=IwAR1P3FYT1mmUqFcgNCOlGSPD1fZDOPDVPG6BxLXWKe0k990lIWj6G-xLuXw
IT起業研究所ITInvC 代表小松仁
