Forbes JAPAN記事「『サイエンス起業家』が創るSF的な未来」がちょっと面白い。
「7月、米合成生物学アクセラレータ「IndieBio(インディバイオ)」が、オンラインで『デモ・デイ』を開催した。インディバイオは、中国・深圳に拠点を置くハードウェア・アクセラレータ『HAX(ハックス)』なども運営する米ベンチャー投資会社SOSVの傘下企業で、主に合成生物学のスタートアップを対象に出資とメンタリングを行っている。『デモ・デイ』は年に2回、選ばれたスタートアップが自社製品やサービスのプレゼンテーションを行うお披露目の舞台だ。」
「今回、プレゼンした企業は、人工肉や人工チョコレートの開発企業から、臭いで爆発物や貨物内の有害生物を検知するニューヨークの会社、植物由来のバイオポリマーを使ったヘア・エクステンションのメーカーまで色とりどりで、起業家たちの性別も国籍もさまざまだ。
その起業理由も社会的使命感にもとづくものばかりである。人工肉は将来的に起こりうる食糧危機への代替食として、人工チョコレートはチョコの消費拡大に伴って止まらない森林伐採への歯止めとして、臭い検知の会社は社会の安全を考えて、そして植物由来のヘア・エクステンションメーカーは利用者の健康を心配してのことだ。
このように、今まで以上にスタートアップのタイプに幅が出てきているうえ、エコシステムそのものが多様化し始めている。しかも、起業家たちが今まで以上に社会的な使命感をもっている──。近年の潮流を改めて実感させるイベントだった。」
「同イベントを主催したのは、2012年に創業された合成生物学ネットワーク・アクセラレータ『SynBioBeta(シンバイオベータ)』だ。同社は黎明期から『Synthetic Biology(合成生物学)』に関連するスタートアップや大企業、投資家、行政などを結びつけることを目的にこのイベントを開いてきた。“人工のクモの糸”で衣類を製造したり、キノコを培養して梱包素材やベーコンを作ったり、絶滅した花の香りを再現したり……。バイオ医薬品の製造といった医療分野の発展はもちろん、映画『ジュラシック・パーク』を思わせるSF的な未来が少しずつ形になろうとしている。」
「インターネットとクラウド、AI、生物学の成熟が合成生物学という領域の成長を加速させたのだ。合成生物学の始祖とも呼べる、2009年創業の『Ginkgo Bioworks(ギンコ・バイオワークス)』はDNAのデータ分析とロボット工学を駆使して、栄養プロテインから腸内フローラを用いた治療薬の開発まで幅広く携わっている。同社の共同創業者兼CEOのジェイソン・ケリーは、『食品、住宅、素材、電子機器──。すべてが生物学による創造的破壊を経験することになる』と、米Forbesの取材に答えている。」
「これらの新興企業が台頭している大きな要因に、まずはクラウドコンピューティングとAIの技術的基盤が整備されてきた点が挙げられる。これにより、DNA解析・合成のコストが下がり、それが実験コストの低下につながり、起業しやすくなったのだ。
そして、もう一つ。生物学や化学をはじめとした『科学(サイエンス)』の領域を中心に、高い専門性をもつ研究者たちが起業するようになったこと。合成生物学の起業家の多くは『博士号』を取得している。『合成生物学が台頭するまでは、アカデミアか、製薬会社や食品会社などの大企業への就職が現実的な選択肢だったが、起業もリアルな選択肢になった』と語るのは、プロバイオティック食品(体に良いバクテリアを含む食品)を開発・販売する『ZBiotics(ジー・バイオティクス)』の共同創業者兼CEOのザック・アボット(37)だ。」
「『“ユニコーン企業(評価額が10億ドル以上の未上場企業)”の多くは大学発のベンチャー企業です。研究に裏打ちされた知識とビジネスマインドを兼ね備えた理系の経営者が増えています』と、日本の起業シーンについて、KPMG/あずさ監査法人のパートナーで企業成長支援本部・インキュベーション部長を務める阿部博はForbes JAPANの取材でそう語っている。」
Ginkgo Bioworks(ギンコ・バイオワークス)の研究所内
「サイエンス起業家」が創るSF的な未来 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
IT起業研究所ITInvC 代表小松仁
