日経ビジネス記事「ソフトバンクGはなぜしぶとい? 危機を好機に変える4つの技術」が面白い。

 

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00639/?P=1

ピンチを乗り越えて成長してきた有力企業のトップら。左からサティア・ナデラ氏、星野佳路氏、豊田章男氏、孫正義氏(写真=ナデラ氏:ロイター/アフロ、星野氏:諸石 信、孫氏:NurPhote/Getty Images)

 

出所:QUICK・ファクトセット

 

・ピンチでパニック状態になったり、普段通りに考えられなくなったりした時、脳はどうなっているのか。脳科学者の岩崎一郎氏によると、多くの脳回路がシャットダウンする「FF状態」にあるという。

FFとはFightとFlightの頭文字で、「戦うか、飛んで逃げるか」の二者択一をいう。自分のことだけを考える「エゴ」状態だ。これは人類が過酷な自然環境に暮らしていた名残。我々の先祖は、生命の危機下で余計な考えを排除し、全神経を生存に集中させることで生き抜いてきたという。

 

・ピンチを糧に成長を続けるしぶとい企業と、そのまま衰退へ向かう会社との差は何なのか。経営学や組織論の世界では、「危機を好機に変える技術」はあらかた確立されている。それは次の4つという。

 

技術1

まず動揺を防ぐために遠大な視野を持つ

 

リーマン・ショック級の市場暴落が起きても、「人類の経済は、曲折を経ながらも、拡大し続ける」との超長期的視点を持つ投資家は狼狽売りはしない。企業経営も同様で、「目の前の危機が、遠大な目標にたどり着く過程の曲折の一つ」と経営陣や社員が信じている会社は、ピンチに動じることはない。

ソフトバンクは、産業界の中でも随一の遠大な目標を掲げる企業だ。「300年後の世界」「30年ビジョン」など超長期軸で未来を展望し、社員と社会に提示している。

 

技術2

反発力を高めるための社員の自己肯定感

 

電動化、コネクテッドなど「CASE」と呼ばれる新技術が押し寄せる自動車産業。開発投資は膨らみ、巨額の資金を持つ米中テック大手の参入も相次ぐ。20年の新車販売台数は19年比1割以上減り8000万台程度となる見通し。欧州や中国はコロナを機に環境対応車への補助を手厚くしており、EV(電気自動車)専業の米テスラが勢いづく。

 そんなピンチをまさにチャンスに変えようとしているトヨタ自動車は19年夏から、ある小さな工夫を始めている。設立80余年で初という社員手帳の配布だ。スケジュール帳のようなものではなく、最初にこう書かれている。

「(変革期は)大きなピンチではありますが、生まれ変わろうとする者にとっては、大きなチャンスでもあります。この時代を生き抜くため、全員が強い危機感を共有し、もう一度、トヨタの強みを取り戻さなくてはいけません」

 

技術3

苦境を打開するための他者を巻き込む風土

 

パソコンの覇者となった後、モバイルへの対応が遅れた米マイクロソフト。周囲から見ると絶体絶命のピンチ以外の何物でもなかったが、結果として、その苦境をばねにさらなる成長を遂げた。

 20年6月期連結の売上高は1430億ドル(約15兆円)、営業利益529億ドル。サティア・ナデラCEO就任前年の13年6月期と比べ収益の規模は2倍だ。

 しぶとさという意味でソフトバンクに勝るとも劣らない同社には、奇妙な人事評価基準がある。「個人としての達成」など一般的な基準の他に「他者の仕事、アイデア、努力を活用した個人としての成果」という項目がある。パフォーマンスを高めるうえでどれだけ他者を巻き込み、助けを求めたか、ということだ。

 

技術4

スピード感を育むための現場優先の意思決定

 

観光業を直撃したコロナ禍の中で、しぶとさを発揮している星野リゾート。4、5月の宿泊者数は前年と比べ8〜9割減だったが、8月は1割減まで戻した。同社の特徴はまさに現場優先の経営だ。

 星野佳路代表が反対しても、現場の意見が通ることは日常茶飯。組織はフラットで、社員は互いを肩書ではなく、名前で呼び合う。星野氏は「大事なのはモチベーション。働くことを楽しいと感じてもらいたい。そのためには現場が自律的に会社を動かすことが重要」と話す。

 

IT起業研究所ITInvC代表 小松仁